焦点:OPEC減産の原油価格上昇2月から、供給面の不安残る

2016年10月28日(金)10時08分

[シンガポール 26日 ロイター] - 石油輸出国機構(OPEC)は11月30日の総会でやっと減産を決める見通しだ。しかし原油価格が本格的に上昇するのは来年2月からで、価格押し上げ効果もOPECが前回減産した2008年より小さくなりそうだ。

総会で減産が決まれば12月1日にも実施されるが、価格に最も大きな影響が出るのは現物ではなく2017年初頭に受渡日が設定されている先物の約定で、2月渡しが中心になるとトレーダーはみている。

エナジー・アスペクツ(シンガポール)の原油アナリストのビレンドラ・ショーハン氏は「今年第4・四半期中の原油価格には影響がないだろう。減産が決まる11月には取引の中心は1月渡しと2月渡しに移るからだ」と話した。1月渡しですら11月下旬には期限を迎える。

データからも2月渡しで持続的に新規のポジションが増えている様子が読み取れる。OPECが減産の方針で合意した9月28日以降、先物2月渡しの未決済建玉は48%増加。オプション市場でも2月渡しに絡む取引が急激に増えている。

OPECの生産調整後の相場の動きがフルに反映することになる3月渡しでも9月28日以来、未決済建玉が12.7%増えており、3月渡しの価格はこの間に5.5%ほど上昇した。

<2008年と異なる事情>

OPECが前回減産で合意したのは世界金融危機時の2008年。このときは09年1月から生産量が日量3022万バレルから同2869万バレルに削減された。

原油価格は10月下旬の60ドル台前半から急落し、1月には45ドル近辺で安定。その後は年末にかけて回復基調をたどった。

ただ、当時は現在と状況がかなり異なる。OPECの減産幅は日量150万バレルで今回の計画よりも大きかったが、需要の落ち込みに対応したものだった。

一方、現在の主な懸念は供給面。米国はシェール革命で世界第3位の産油国に浮上し、OPECとロシアの生産量が増えて世界的に生産は過剰となっている。

アナリストの間では、OPECが減産に踏み切っても世界の原油生産は高水準が続き、減産決定後に価格が急上昇することはないとの見方が大勢だ。

バーンスタイン・エナジーは今月、来年のブレント原油の価格見通しを従来の70ドルから60ドルに引き下げた。

同社は「OPECの年初来の供給量は過去最大級で、世界的に国内総生産(GDP)は弱く、原油在庫が増え続けているため、原油価格の見通しを引き下げた」と説明した。

(Mark Tay記者)

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