焦点:返咲き目指すサルコジ氏、大統領選で移民に厳しい姿勢強調

2016年8月25日(木)21時08分

[パリ 23日 ロイター] - フランスのサルコジ前大統領は再選を目指した2012年の大統領選で、極右勢力の票を奪取しようと選挙活動を展開したが、経済低迷への有権者の失望の方が大きく、オランド現大統領に敗れた。

4年後の現在、保守派はこうした有権者の姿勢が変化したことを望んでいる。IFOPの7月の調査では、2017年の大統領選での争点として、失業率や経済への取り組みよりも治安政策が重視されていることが示された。

22日、2017年の大統領選に出馬する意向を表明したサルコジ氏は、ソーシャル・メディアへの投稿で「フランスが歴史上困難な時期に直面するなか、私には選挙戦を率いる力があると感じている」とし、「治安と移民に厳しい態度で取り組む大統領」としてのイメージを強化しようとしている。

フランスでは2015年1月以降にイスラム過激派の攻撃で約230人が死亡。欧州での難民危機は移民受け入れに対する懸念につながり、極右政党、国民戦線(FN)の台頭を招いている。

サルコジ氏の新著「全てはフランスのために」によると、同氏はFNの支持者に対し、移民を両親に持つ子どもがフランス国籍を得る権利を限定させると約束している。

また、欧州連合(EU)が一貫性のある移民政策をまとめるまで移民が近親者をフランスに呼び寄せる権利を停止させるとしているほか、同国が受け入れる移民の数を「大幅に削減」し、5年以内に経済移民を撤廃すると表明している。

大学などでのイスラム教徒のヘッドスカーフ着用禁止を公約することで、サルコジ氏はフランスの国家アイデンティティーで重要な世俗主義の積極的な擁護者としての一面を強調しようとしている。

同氏はフランスにとって最大の闘いは「世界から自国を切り離す誘惑に負けることなく、いかにしてわれわれの生活様式を守っていくか」だと主張。英国が6月の国民投票でEU離脱を選んだことに暗に言及した格好だ。

<支持率が上昇>

IFOPのフレデリック・ダビ氏は、7月の革命記念日に南部ニースで起きたトラック突入や北部ルーアン近郊のカトリック教会での神父殺害などの攻撃を受け、大統領選に向けた選挙活動の焦点は、経済問題からサルコジ氏の最も得意とする分野に移りつつあるとの見方を示した。

サルコジ氏が所属する仏共和党など中道・右派陣営は、11月に大統領選の候補者を決定する予備選挙を実施し、保守主流派のジュペ元首相ら10人以上が出馬するとみられている。年初時点の世論調査では、サルコジ氏はライバルのジュペ元首相に大幅なリードを許していた。しかしElabeが23日に発表した調査によると、忠実な党員を対象にした調査ではサルコジ氏の支持率は63%と、ジュペ氏(36%)を大きく引き離した。

ただ、より幅広い有権者の間ではジュペ氏の支持率の方が53%と、サルコジ氏の46%を上回っており、サルコジ氏が直面する課題を浮き彫りにしている。

ダビ氏は、予備選挙は強硬的なトーンが注目を集めることが多いため、「現時点でジュペ氏が支持率でリードしていても、サルコジ氏の方が優位に立っている」と述べた。

<「復讐」を否定>

サルコジ氏の大統領1期目では、そのエネルギッシュなスタイルと時に癪に障るような振る舞いが有権者を二分した一方、税制と労働市場の改革に対する控えめな取り組みや雇用創出が十分でなかったことが、自由市場主義者と左派有権者の両方を幻滅させる結果となった。

2012年5月の大統領選の決選投票で敗れたあと、サルコジ氏は政界引退を表明。しかし2014年9月に「社会党による破滅的な政権運営」からフランスを救出する必要があるとして復帰した。

サルコジ氏は22日にソーシャルメディアで大統領選への出馬を表明した際、「復讐を企てているのではない」と述べた。

左派の対立勢力はサルコジ氏の政策への批判を素早く展開。社会党のジャン・マリー・ル・グエン議員はラジオ局ヨーロッパ1に対し、サルコジ氏の政策は「フランス国民を団結させるのではなく、分断させるものだ」と批判。経済政策については富裕層に利益をもたらす内容になるとの考えを示した。

(Richard Lough記者 翻訳:本田ももこ 編集:加藤京子)

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