首相がサミットでデータ提示、リーマン級下落と主張 一部で異論

2016年5月26日(木)19時01分

[伊勢/志摩 26日 ロイター] - 安倍晋三首相は26日、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の世界経済を討議するセッションで、コモディティ価格が「2014年以降55%下落しており、リーマン・ショック前後と同様」とするデータを各国に提示した。

しかし、現状の経済状況が「危機」に当たるかどうか異なる意見も表明され、首脳宣言の文言について、あす27日の発表ギリギリまで調整が続く見通しだ。

セッション後に世耕弘成官房副長官が明らかにした。安倍首相が示した資料では、エネルギー価格の下落率がリーマンショック後と同じ規模になっていると指摘。

新興国の投資伸び率が「リーマン・ショックより低い水準まで低下」したことや、新興国の国内総生産(GDP)の伸び率や輸入伸び率も「リーマン・ショック以降で最も低い水準」とし、リーマン・ショック時との比較を繰り返した。

もっとも、世耕氏によると、ある1人の首脳からは「クライシスとまで言うのはいかがなものか」との指摘があり、最終的な文言調整は首脳の補佐役であるシェルパ(首脳の補佐役)間での協議に持ち越された。日本の消費税率引き上げをめぐる議論は行われなかった。

一方、主要7カ国(G7)は機動的な財政政策と構造改革の推進で一致。世耕副長官によると、ある首脳から「財政出動を含む3本の矢が大事」との発言を引き出したという。

さらに中間層の利益拡大に向け、財政出動が果たす役割について、首脳間で認識を共有した。

ただ、安倍首相は「財政出動のタイミングや規模については、各国の事情を反映する必要がある」と述べ、一定の配慮を見せた。

サミットに先立って開かれたG7財務相会議では、ドイツのショイブレ財務相が「最も重要なのは構造改革」と述べるなど、財政出動では必ずしも各国の足並みがそろったわけではなかった。

しかし、今回の討議ではこうした意見が出ず、世耕氏は「世界経済認識とそれに対する処方せんでG7の首脳が大きく一致した」と強調。「G7として一歩踏み込んだ合意ができた」と、このセッションでの議論の進展を高く評価した。

さらにG7として、新興国経済の停滞に連携して対処していく必要性について、首脳間で確認した。

焦点の1つとみられていた為替に関しては議論されず、過去のG7やG20での合意内容を再確認する方向だ。財政再建についても「全く話題にならなかった」(世耕氏)という。

討議では、英国の欧州共同体(EU)離脱問題も話題になり、一部に首脳から状況は(残留に向けて)改善しているのではないかとの見解が表明されたという。

27日に閉幕するサミットは、首脳宣言で「G7伊勢志摩経済イニシアティブ」を打ち出し、世界経済を主要国がリードする姿を示す。

(梅川崇、宮崎亜巳 編集:田巻一彦)

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