トルコがロシア軍機撃墜、プーチン氏「決して許さない」

2015年11月25日(水)15時35分

[アンカラ/モスクワ 24日 ロイター] - トルコは24日、度重なる警告にもかかわらず領空を侵犯したとして、シリア国境付近でロシアの軍用機を撃墜。ソビエト時代も含め、北大西洋条約機構(NATO)加盟国によるロシア軍機撃墜が確認されたのは1950年代以来初めてで、緊張が高まっている。

ロシアのプーチン大統領は、「テロリストの共犯者ら」による背信行為としてトルコを強く非難。両国関係に重大な影響をもたらすとの認識を示し、「このような犯罪をわれわれは決して許さない」とした。

プーチン大統領によると、ロシア機がトルコ国境から1キロ離れたシリア領空を高度6000メートルで飛行中、F━16機が発射した空対空ミサイルの攻撃を受けた。トルコ国境から4キロ離れたシリア領内に墜落したとしている。

またロシア機がトルコに脅威を与えた事実は存在せず、シリア領内の過激派組織「イスラム国」を攻撃する任務を実行していたにすぎないと説明した。

一方、トルコは国連安全保障理事会に対し、領空を侵犯した国籍不明の機体を同国が撃墜したと説明。領空を侵犯した2機は、5分間に10回警告を発したにもかかわらず、17秒間にわたりトルコ上空を約1.6キロ以上飛行したとしている。トルコには国家安全保障上の理由から、こうした行動に出る権利があると主張した。

「回避するためにわれわれが最善を尽くしたことを誰も疑うべきではない。だが、トルコが自国の国境を守る権利を皆が尊重すべきだ」とトルコのエルドアン大統領は首都アンカラで演説した。

同大統領はまた、ロシアによるシリアへの空爆についても、過去数週間で自国領空は数回侵犯されたが、トルコの「冷静さ」があったからこそ最悪な事態を防ぐことができたと強調した。

ロシア、トルコの両国はそれぞれの大使を呼び出し抗議している。ロシアのラブロフ外相は25日に予定されていたトルコ訪問をキャンセルし、国民に対しても渡航を控えるよう求めた。ロシア国防省も対抗措置を準備していることを明らかにした。

パリ同時多発攻撃後に高まっていた、ロシアと西側のイスラム国掃討に向けた連携に、今回の事件が水を差す可能性がある。

トルコによるロシア機撃墜を受け、イスラム国掃討作戦をめぐり訪米中のオランド仏大統領とオバマ米大統領は会談後の共同記者会見で、ロシアとトルコ両国は緊張の高まりを避ける必要があるとの考えを表明した。

オバマ大統領は「緊張の高まりにつながらないようにすることが最優先課題となる」と述べ、オランド大統領も「緊張の高まりは大きな阻害要因となるため、これを回避する必要がある」と語った。

NATOは緊急理事会を開催。ストルテンベルグNATO事務総長はロシア機撃墜はトルコ領内で起こったとするトルコの立場を支持した。

<脱出したパイロットを銃撃>

非政府組織「シリア人権監視団」によると、軍用機が墜落したのはシリア北西部ラタキア県内の山間部。同県では空爆が行われ、政府側と反政府側が地上戦を繰り広げていた。

トルコ民間テレビ局の映像では、軍用機が炎上し、煙の尾を空中に残しながら森林地帯に墜落していく様子が映し出されている。

また同国のアナドル通信社による別の映像からは、墜落前にパイロット2人がパラシュートで脱出しているのが分かる。

シリア反体制派であるトルクメン人部隊の副司令官は、同部隊兵士らが降下中のパイロット2人を銃撃して死亡させたと語った。一方ロシア軍は、パイロットの1人は地上から銃で撃たれて死亡し、もう1人兵士が救出作戦中に死亡したことを確認した。

トルコの高官は少なくともパイロット1人が生存している可能性があると述べた。

ロイターが入手した映像では、パイロットの1人は地上で動かず、重傷を負っているように見えた。

米軍の広報担当者は、今回の問題はトルコとロシア政府の問題であり、米国主導の有志連合によるシリアとイラクへの軍事作戦は「計画通り」遂行されると語った。

ロシアがシリアで空爆を別途開始したことで、第2次大戦後初めて、ロシアとNATO加盟国の爆撃機が同じ空域内で軍事作戦を遂行するという事態を招いている。双方ともトルコ国境近くに位置する武装勢力を標的としている。

ロシアによるシリアへの軍事的関与は、先月に発生した乗員乗客224人全員の命を奪ったロシア旅客機墜落事件など、ロシアに犠牲をもたらしている。しかし、シリアでの軍事作戦について、ロシア世論が反対する兆候はなく、クレムリンはこの作戦を継続するとしている。

*写真を追加して再送します。

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