アングル:南ア中銀、通貨防衛を阻む外貨準備不足

2015年9月8日(火)11時25分

[ヨハネスブルク 7日 ロイター] - 南アフリカ準備銀行(中央銀行)は外貨準備が低水準にとどまっているため、通貨ランドの急落を食い止める力を失っている。

ランドの対ドル相場は年初来で21%下落し、7日には過去最安値をつけた。米国の利上げ観測を背景に新興国資産全般が売られていることに加え、中銀が同日発表した南アフリカの8月の外貨・金準備額が412億2440万ドルと、ほとんど増えていないと判明したことが打撃になった。

足元の外貨準備額は5─7カ月間の輸入額をカバーできる水準ではあるものの、同国が国内総生産(GDP)の5%近い経常赤字を抱えている点を踏まえると、投機的なランド売りに対しては極めて脆弱な状況に置かれている。

BNPパリバ・カディス・セキュリティーズのエコノミスト、ジェフリー・シュルツ氏はロイターに「他の新興国と比べた南アフリカの外貨準備の少なさは、通貨価値に影響を及ぼせる力を備えていないことを意味する」と指摘した。

中銀もかねてからその点は認めており、クガニャゴ総裁は前週末にあらためて外貨準備の水準が通貨防衛には不十分だとの考えを示した。

ドルは年末にかけて堅調を維持しそうで、南アフリカの公的準備の柱である金の価格は他のコモディティに歩調をそろえて下がっている。このため同国の外貨準備が増加する余地は乏しい。

NKCアフリカン・エコノミクスのアナリスト、バート・ステメット氏は「金価格とドルの短期的な見通しは『現在とほとんど同じ』で、外貨準備は圧迫されるだろう」と話す。

同氏は、今後米連邦準備理事会(FRB)の利上げが見込まれる中で、こうした外貨準備をめぐる懸念が、既に売られ過ぎの状態にあるランドの価値をさらに損なうとみている。

外貨準備が使えない中銀は、経済成長率が2%を下回る伸びにとどまっているにもかかわらず、7月に25ベーシスポイント(bp)引き上げた政策金利を一段と上げるしかなくなる可能性がある。

年6回予定される金融政策委員会(MPC)の5回目が、今月開かれる。

ネドバンクのアナリストチームは調査ノートで「MPCは最近数週間のランド急落がもたらす物価の上振れリスクと、ランドがこれからもっと値下がりする恐れをより重視する見込みだ」とした上で、今月中に25bpの追加利上げが実施されるリスクは大きいとの見方は変わらないと主張した。

(Stella Mapenzauswa記者)

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