南シナ海の埋め立てに懸念、日米で安定に関与=中谷防衛相

2015年5月30日(土)12時38分

[シンガポール 30日 ロイター] - 中谷元防衛相は30日、各国の防衛当局者が集まるアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で講演し、中国を念頭に、南シナ海で進む岩礁の埋め立てに懸念を示した。さらに自衛隊と米軍の艦船が、昨年秋に南シナ海で共同航行した例を引き合いに出し、同海域の安定に日米が関与していく考えを表明した。

<海洋安全保障に「具体的な協力」>

中谷防衛相は、具体的な国名こそ挙げなかったが、中国による南シナ海の埋め立てに言及。「残念なことに、今この瞬間も、南シナ海において大規模な埋め立てや、港湾・滑走路の建設が急速に進められている」と語った。

さらに「無法が放置されれば、秩序は破壊され平和と安定は崩れる」と指摘。「中国を含む各国が、このような責任ある立場で振る舞うことを期待する。例えば、南シナ海行動規範の早期策定のような取り組みについても、これを言葉だけでなく、行動をもって実践することが重要だ」と述べた。

その上で同防衛相は、今年4月に改定した防衛協力の指針(ガイドライン)で日米の協力が地理的に拡大したことを説明し、両国が南シナ海の安定に関与していく考えを示した。

昨年10月に日米の艦船が南シナ海を共同で航行した例を挙げ、「日米は南シナ海においても共同訓練を行い、海洋安全保障のための具体的な協力を行っている」と述べた。さらに「今後とも地域の平和と安定に貢献していく」と語った。

島しょをめぐって周辺国が領有権を争う南シナ海では、中国が岩礁を埋め立てて滑走路や港を建設している。フィリピンなどが強く反発するとともに、自由な航行が侵害されることを懸念する米国が、中国に対し強い警告を発し始めた。米国は、自衛隊と米軍が協力して哨戒に当たることにも期待を示している。

日本は同海域で領有権を争う当事国ではなく、自衛隊による哨戒活動は東シナ海を含む日本周辺にとどまっている。しかし南シナ海は、年間5兆ドル規模の貨物が行き交う貿易ルート上の要衝で、その多くが日本に出入りしている。

<ASEAN自身も能力向上を>

このほか中谷防衛相は、東南アジア諸国自身が海洋の監視能力を向上させることが重要だと訴えた。昨年3月にマレーシア航空機が行方不明になったことに言及し、「地域の空を24時間、監視・管制できるシステムがあれば、航空機の航行をさらに安全にできる」と語った。

海洋艦船や軍用機の突発的な衝突を回避するために、各国間で事前に連絡方法やルールを整え、共同訓練を実施していくことや、各国が調達を増やしつつある潜水艦の事故防止策の検討も呼びかけた。

(久保信博 編集:宮崎大)

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