中国国有銀行、米制裁に備え緊急時対応策の見直し急ぐ

2020年7月10日(金)00時16分

[北京/香港/上海 9日 ロイター] - 中国の国有金融機関は、香港の反体制的な活動を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)の施行で米国から制裁を受けた場合に備え、緊急時対応策の見直しを急いでいることが、5行の関係者の証言で分かった。

このうち中国銀行 や中国工商銀行(ICBC) は最悪のシナリオとして米ドル資金の締め出しや米ドル決済の停止などを想定しているほか、中国銀行は香港で米ドル不足を恐れた顧客が取り付け騒ぎを起こす事態に備え対応策を検討しているという。

ドルは国際決済や中央銀行の外貨準備にとって支配的な通貨であり、ドルが利用できなければ死活問題となる。ある関係者は「われわれは最善を望んでいるが、最悪の事態に備えている。物事がどう転ぶかは誰にも分からない」と語った。

米上下両院はすでに、国安法の実施に当たる中国政府当局者と取引した銀行に制裁を科す「香港自治法案」を可決しており、トランプ大統領の署名を待っている。法案では、香港の自治の侵害に関与した中国当局者らやその取引金融機関に制裁を科すことが盛り込まれている。

ステップトウ&ジョンソン(香港)で制裁や反マネーロンダリング(資金洗浄)の専門弁護士を務めるニック・ターナー氏は「法案が施行されれば、銀行は米国の金融機関を経由してドル取引を決済できなくなると解釈されるが、他の議会制裁法案とは異なり、それを義務付ける特定の条項は含まれていない」とした上で、法律がどう運用されるか見極めが必要だと述べた。

関係筋によると、中国農業銀行 はより穏やかなシナリオとして、米国から制裁対象に指定された顧客が流動性問題などに直面した場合、対処方法を検討する必要があるとしている。

また中国銀行では、1979年のイスラム革命以降、たびたび米国の制裁を受けてきたイランの例を参考にしているという。同行のドル負債は2019年末時点で約4330億ドルで、4大銀行中、ドルへのエクスポージャーが最も大きい。4大銀行のドル負債は19年末時点で総額1兆ドル相当に上る。

中国銀行や中国工商銀行、中国農業銀行からのコメントは得られていない。

  • 1/1

今、あなたにオススメ

今、あなたにオススメ