焦点:ファミマが業務見直し加速、IT駆使で「アナログ」を実現

2017年7月21日(金)19時25分

[東京 21日 ロイター] - ファミリーマートが大きく変わろうとしている。昨年9月に就任した沢田貴司社長の直轄で立ち上げた「改革推進室」が、本部や店舗の業務をゼロベースで見直している。

成長やサービス拡大とともに積み上がってきた業務を「引き算」。不必要な業務を削減し、ITでの代替も進める。ただ、目指す姿は、人による接客をより厚くする、コンビニの進化形だ。

<足し算から引き算へ>

沢田社長は、ロイターのインタビューで「皆も気付いていたが、なかなか手が付けられなかったこと。全く別の組織で、それに特化し、社長が強引に進めなければできない」と「改革推進室」立ち上げの狙いを話す。現在、メンバーは16名だが、改革が必要な組織を組み入れるなどし「もっと増やす。20―30名の組織になる」という。

「マニュアル通りに清掃作業をすると、1日15時間の清掃が必要になる」──。改革の中心人物として入社した植野大輔・改革推進室長は呆れたように話す。

おにぎりなどの販売とコピー機サービスが中心だったコンビニは、公共料金の支払い、揚げ物などの店内調理、チケットの発券、宅配便の受け渡し、いれたてコーヒー、イートインと、サービスが増えるにつれて店員が行う業務も膨れ上がってきた。店舗数が飽和に近いと言われる中で、コンビニ業界内はもちろん、他業界との競争も激化しており、その状況下で業務が増えることは「まさに二重苦」(植野室長)。改革推進室では、現在行っている業務の半減を目指して見直しを進めている。

例えば、1店舗当たりの宅配便の取り扱い量が昨年比倍になる中で、クレームも倍になっているという。これまで、100ページあった宅配便のマニュアルを10枚程度のシートにまとめ、誰でもすぐに対応できるように見直し、クレームの減少を狙う。また、客の年齢や性別を打ち込むキーをなくすなど、110億円を投じて順次レジを刷新する。

24時間営業の是非についても、沢田社長は「実験をこれから始める」と述べ、そのあり方を模索する考えを示した。

<未来のコンビは「もっとアナログ」>

改革推進室の立ち上げ以降、グーグル、LINE と次々に提携を結ぶなど、テクノロジーの取り込みも積極的だ。店舗においては、LINEの人工知能「clova」を使い、在庫管理や受発注を自動で行うだけでなく、どのような客が来店しているかを把握、商品の推奨や外国語での説明など、ひとりひとりに合ったサービスを提供するなどの構想を描く。

ただ、ITを駆使した未来のファミマについて、沢田社長は「アマゾンGO」との違いを強調する。アマゾンGOは、入店から決済まで、人手を介することなくできるため、店員は極力少なくなる。一方、未来のファミマは「もっとアナログになる」という。発注の精度を上げたり、検品を完全になくすなど、ITを活用する一方で、余裕が生じた店員は、高齢者の見守りや地域との関わりを増やすなど「人にしかできない仕事をもっと高める。地域になくてはならない存在になる」。

グーグルと一緒に進めている本部の改革では、「一番大変な部署で変えることができれば、どこでも変えることができる」(植野室長)ということで、主に出店業務などを担う「開発本部」から行っている。グーグルには「今やっている仕事は本当に価値があるか、何かを創造しているか、ということを常に問い掛けつづける文化がある。ビジネスプロセスを変えるだけでなく、社内カルチャーを変える」という。

<主婦をターゲットに>

同社が1万2000店舗に調査したところ、人手が足りていると言ったのは20%で、残りの80%が人手不足に陥っていると危機感を感じている、との結果が出た。加盟店のパート・アルバイト集めは「重要かつ緊急のアジェンダ」(植野室長)との判断から、改革推進室案件となった。

同社では、在任期間が長く、現在でも店舗の核となっている人が多い主婦を2年で10万人と積極採用する目標を掲げる。子育て中でも短時間勤務などを可能とし、働きやすい環境を整える。また、本部でも、主婦を地域限定の社員として登用するなどの新制度を導入する予定だ。

(清水律子 サム・ナッセイ 編集:吉瀬邦彦)

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