アングル:新たな信用危機に見舞われる中国の中小企業

2017年6月28日(水)08時53分

[香港 26日 ロイター] - 中国の中小企業は既に多額の借金の重圧に苦しんでいるが、資金繰りの面でも厳しい状況に見舞われている。多くの中小企業が頼みの綱としている短期融資を含むリスクの高い企業向け貸し出しについて、規制当局が銀行に抑制を促しているからだ。

大手の国有企業は国有銀行からこれまで通りの資金を調達できる道を確保している。しかし中小企業は借り入れが困難となり、投資実行を考え直すか、調達コストがずっと高い別の手段を見つけなければならないという。

ムーディーズと人民銀行(中央銀行)のデータによると、期間1年までの短期銀行融資は、昨年1月時点で前年比4.8%増と非金融部門向けの与信カテゴリーで最も高い伸びを記録した。それが今年3月の伸び率が1%弱と与信カテゴリー別で最低に転じている。

例えば中国製造業の一大拠点、珠江地域の石材加工メーカー、深セン市利仕特建材有限公司にとって、資金繰りが難しくなることは慎重なキャッシュ管理を迫られるだけでなく、取引先に次から次へと支払い不能が及んでいく恐れさえある。

同社の輸出担当幹部は「資金繰り問題のせいで大型プロジェクトをやるのは不安だ。その代りにいくつかの小さなプロジェクトだけを手掛けている」とロイターに語った。同社はカトリックの聖人や仏陀の石像などを高級不動産向けの装飾物として生産し、トランプ・インターナショナル・ホテルなども顧客に含まれている。

この輸出担当幹部の話では、同社は通常の銀行融資より金利が少なくとも「2倍か3倍は高い」民間金融業者から仲介者などを通じて資金を借り入れることを余儀なくされている。

また国有銀行からの借り入れはできるものの、近年はハードルが上がってきたと話す広州のディスプレーメーカーのある幹部は「国有銀行からの借り入れに要する期間が60─90日程度かかるのが普通になっている。銀行側がより高位の当局者に承認を得なければならず、手続きが長引いている」と説明し、先行きの投資には慎重姿勢を強めていると打ち明けた。

もっとも中国企業にとって、借り入れを巡る痛みは今に始まったことではない。

最高格付け企業が発行する社債でも足元の利回りは、昨年10月の直近ボトムから75%上昇。相対的に格付けが低い企業の社債利回りのプレミアムは昨年末以降で2倍以上となり、先週終盤はおよそ36ベーシスポイント(bp)だった。

1─4月の中国企業向け協調融資は前年同期の3分の1足らずにまで落ち込んだ。

一方、会計処理上は債務ではなく資本とみなされる永久債の発行は増加しており、一部企業の債務ポジションの実態が分かりにくくなっているとの懸念も出ている。

こうした中で政策担当者からすれば、与信環境を引き締めることこそが適切な処方箋だと言える。

ジェフリーズのストラテジスト、ショーン・ダービー氏は、中国では与信コストよりも、与信利用可能度の方が重要な問題だと指摘した。アナリストだけでなく多くの企業経営者さえ、よりリスクの高い借り手の与信利用可能度を当局が制限すれば、企業の健全性が高まり、不可解な投資を排除することにつながるとみている。

(Umesh Desai記者)

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