アングル:ふくおか・十八銀、統合再延期の公算 シェア低減へ打開策示せず

2017年6月26日(月)08時47分

[東京 26日 ロイター] - ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)と長崎県を地盤とする十八銀行が、今年10月予定の統合を再延期する公算が大きくなっている。新たに誕生する銀行の長崎県内での貸出シェアが約7割となることを公正取引委員会が懸念しているためだ。

審査が長期化して統合はいったん先延ばしになっていたが、シェア引き下げのための明確な解決策がいまだに示せず、承認を得る時期が見通せていないもようだ。

<再延期の是非、7月に決断>

新銀行は、長崎市に本店を置く十八銀行と長崎県佐世保市に本店があるFFG傘下の親和銀行が合併して発足する計画。同県内の貸出シェアは約70%となる。

FFGの広報担当者によると、同社の柴戸隆成社長は16日、記者団に10月の統合を目指すと述べる一方、統合を再び延期するかどうかの判断は「7月中ぐらいをデッドラインと考える必要がある」とした。

しかし、関係者からは「情勢は非常に厳しい」との声が出ている。10月に統合するには、その前に公取委の承認だけでなく、株式交換比率の決定、臨時株主総会での承認などを経る必要があるからだ。

<債権譲渡巡って食い違い>

公取委は、長崎県内に有力な競争相手がいなくなることを問題視している。

FFGと十八銀は、長崎県での貸出シェアを引き下げるため、保有する債権を別の金融機関に譲渡することを検討している。ただ、足元では公取委と両社の認識の差が浮き彫りになりつつある。

競争政策に詳しい法曹関係者によると、公取委は長崎に根を張った有力な競争相手が必要だと考えているという。

このため、新銀行の貸出シェアの低下が一時的な現象で終わるのは望ましくなく、低下した状態が持続することが求められ、「譲渡された債権が短期間で回収され、(競争相手となる)金融機関が長崎を出て行ってしまっては、債権をいったん譲渡しても意味がない」(同関係者)と公取委はみているもようだ。

債権を譲り受ける金融機関には、長崎県内に新たに支店を出すなどして顧客を開拓する意欲が必要だという。

だが、FFGと十八銀が検討している債権譲渡が、有力な競争相手を生み出すのかは不透明だ。

複数の関係者によると、両社は親和銀と十八銀双方に取引がある顧客の意向把握をもとに譲渡債権の見込み額を算出し、公取委に伝えているもよう。

しかし、現在は顧客の意向確認の段階で、債権の引き受け手となる「金融機関との協議はこれからだ」(関係者)という。

佐賀銀行の陣内芳博頭取は22日の定例会見で、仮にFFGなどから債権譲渡の打診があれば「個別に一件、一件判断する」としたが、現時点で打診は来ていないと述べた。

また、佐賀銀が長崎県に展開する3店舗について、人員増などの強化策は考えていないとも指摘した。

<白紙撤回のリスクも>

長崎県の経済界関係者は「長崎は景気が良くないのに、誰が腰を据えて長崎に進出しようとするだろうか」と、新しい競争相手の出現に疑問符を付けている。

総務省によると、2010年と15年のデータをもとにした長崎県の人口減少率は3.5%で、九州の中で最も高い。

さらに長崎の主要産業である造船業は、資源需要の減退に伴う不況から抜け切れていない。日銀長崎支店によれば、造船業の受注高は17年1―3月期に前年比25.4%減。16年入り後、四半期ベースで前年比マイナスが続いている。

金融庁の幹部は「審査の行方は公取の手の中にあり、われわれは入っていけない」と指摘。そのうえで「両社は10月の統合を目指している。われわれは両社の取り組みを見守っている」と話す。

しかし、九州の経済界関係者からは、公取委と両社の溝は深く、統合計画が白紙撤回に追い込まれるリスクもあるとの指摘が出ている。

(和田崇彦 編集:田巻一彦)

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