焦点:支持率急落で安倍首相の3期目に暗雲、都議選が目先の試金石

2017年6月22日(木)18時38分

[東京 22日 ロイター] - 数カ月前、安倍晋三首相は2018年9月に3期目の自民党総裁に選ばれ、日本の首相として史上最長の在任期間に挑み、悲願である憲法改正の実現に向け順調に進んでいるように思われた。

しかし、加計学園問題と与党の国会運営に対する批判を受け、内閣支持率は急落、今や先行きには暗雲がたれ込めている。7月2日投開票の東京都議会議員選挙は、グローバル投資家にとって魅力となっている安倍内閣の安定性の行方を占ううえで、1つの試金石になる。

疑惑の中心となっているのは、安倍首相の友人が理事長である学校法人「加計学園」の獣医学部新設が認可された過程で、首相と側近が文部科学省に働きかけたのかどうかという点だ。

安倍首相は国会で、関与は一切なかったと繰り返し反論した。

この間、疑惑そのものよりも、安倍首相や菅義偉官房長官など首相側近の言動──情報を隠したり、内部情報を明らかにした元文部科学次官への中傷など──に対して、国民が長期政権ゆえのおごりを感じている、との見方が広がった。

ある自民党の若手議員は「菅官房長官の記者会見での不遜な態度、前次官への人格攻撃、あれはまずかった」と話す。「そういう『上からの物言い』に国民は反感を持っている」──。

次の衆院選は2018年12月の任期満了までには行われるが、東京都民の評価は、7月の都議選である程度、明らかになるだろう。

都議選は表向き、就任1年目の小池百合子都知事が率いる「都民ファーストの会」の公認候補と推薦候補で都議会の過半数議席獲得があるのか、そのことによって同知事の信認を都民に問う選挙だ。だが、地方の問題だけではなく、国政レベルでの有権者の見方も反映される。

自民党東京都連会長で自民幹事長代理の下村博文氏は20日の会見で、今回の加計学園問題と内閣支持率低下は「国政の問題ではあるが、都議会選に残念ながら、マイナスの影響になる」と指摘。さらに「過去の都議選は、その後の国政選挙に必ず影響している」と懸念を示した。

市場関係者も警戒感を示す。あかつき証券・投資調査部長の藤井知明氏は「都議選で自民党が現状議席から半減することになれば、安倍政権の不安定化が警戒され、ネガティブ材料になる。政治の安定は投資家にとって、日本株の買い要因となっていることは確か」と話す。

与党は、参院の委員会での審議を求める野党に対し「中間報告」という過去に数度しか使われたことのないやり方で本会議を開き、共謀罪法案を可決・成立させ、直後に国会を閉会。その後の報道各社の世論調査で、安倍首相の支持率は10ポイント超の急落となった。

19日の会見で安倍首相は国民の信頼を取り戻すと約束した。にもかかわらず、野党の閉会中審査の要求に応じず、臨時国会開催の要求も、内閣ははねつける見通し。

加計学園問題では、安倍内閣の萩生田光一官房副長官の関与を示すとされる文書も明らかになり、事態は簡単に終息しそうにない。副長官は「行政をゆがめるような仕事はしていない」としている。

コロンビア大学のゲリー・カーティス名誉教授は「安倍首相とその周辺で、急速にほころびが拡大している。現段階ではまだ安倍首相が3期目も総理を務めるほうに賭けるが、1週間前と比べると、その確率は大きく低下している」との見方を示した。

安倍首相は内閣改造の可能性を示唆したが、改造内閣は支持率回復につながる場合もある一方、閣僚の新たなスキャンダルや失言で逆効果になるリスクもある。

過去の支持率低下を乗り切ってきた安倍首相だが、2018年の自民党総裁選には、石破茂元防衛相、岸田文雄外相などライバルからの挑戦が予想される。

与党内でも意見の分かれる憲法改正を、約束通り2020年に達成するための道のりはなお険しい。

(Linda Sieg 翻訳:宮崎亜巳 編集:田巻一彦)

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