出光創業家、社長ら経営陣の選任反対へ 対案は出さず

2017年6月5日(月)17時13分

[東京 5日 ロイター] - 昭和シェル石油との経営統合に反対する出光興産創業家の代理人は5日、記者会見し、29日に予定されている株主総会で月岡隆社長ら5人の取締役選任に反対すると発表した。

出光昭介名誉会長らの代理人を務める鶴間洋平弁護士は、創業家側から取締役候補案を出す考えはないと述べた。経営統合に代わる具体的な提案についても、「会社の経営に関しては株主という立場からは関与すべきではない」として示さなかった。

出光昭介名誉会長とその家族は、合併に必要な特別決議で拒否権を発動できる3分の1以上の議決権を保有すると主張する。同氏らは、「体質・社風」が異なる昭和シェルとの経営統合は出光興産の創業以来の理念を損なうとして反対をしている。

出光昭介氏は創業者・出光佐三氏の長男。1981年から1993年まで社長を務めた。

創業家側は、会社側が提案している12人の取締役候補のうち、月岡社長、関大輔副社長ら5人について「経営統合に関する経営判断の誤り」などを理由として、選任に反対する。

鶴間弁護士は、機関投資家など他の株主にも反対を働きかける考えを示したが、委任状を集めることはせず、「あくまでも反対してくださいというお願いをする」という。

株主総会で、創業家側の狙い通り、5人の選任が否決されたらどうなるのか。鶴間弁護士は、残りの7人の取締役が選任されれば会社経営に「致命的な中断は生じない」との見方を示し、さらにその後、会社側から「株主の意向を反映した」追加の取締役候補が提案されるのが望ましいと述べた。

昨年6月の定時株主総会で昭介氏らの反対が明らかになって以降、双方の主張は平行線をたどり、事態はこう着状態に陥ったままだ。

出光興産は昨年10月、4月に予定していた合併を延期すると発表。その後、昨年12月に同社は、公正取引委員会の承認を受け、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS) から昭和シェルの株式31.3%を約1600億円を投じて買い取り、筆頭株主になった。

先月には、両社は合併に先行して業務提携を進めることで合意したと発表。原油の共同調達や生産面での協力を先行して加速することで、今年4月から3年以内に年間250億円以上の相乗効果を目指すとしている。

一方、創業家側は「中途半端に案を出すのはかえって無責任」(鶴間弁護士)との理由から、具体的な代替案を示していない。

株主総会に向けて、他の株主への説得工作を開始する創業家側だが、「出光の理念」を守りつつ、厳しい事業環境のなかで、どう生き残っていくのか、従来から繰り返されている反対理由よりもさらに踏み込んだ、納得のできる説明が大株主として求められる。

(浦中 大我)

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