アングル:トランプ政権、低過ぎる想定長期金利がはらむリスク

2017年5月26日(金)08時42分

[ワシントン 24日 ロイター] - トランプ米政権が議会に提出した予算教書が示す財政政策によって、実際の国内総生産(GDP)実質成長率が政権の期待通り3%に高まったとしても、政府が借り入れで負担するコストは想定外に増大する公算が大きい。金利が跳ね上がるため、企業や家計が支出を抑えて肝心の成長が鈍化し、政権が目指す長期的な財政赤字削減にも支障をきたしかねない。

エコノミストによると、経済成長率と米10年国債利回り(長期金利)には、ざっくりとしているが直接的な相関性がある。もし実質成長率が加速して持続的に3%ペースで推移するようになれば、長期金利は政権が想定する3.8%をはるかに超え、過去のケースに基づけば恐らく5%に向かってもおかしくない。

そうなると米連邦準備理事会(FRB)は、これまでの緩やかで漸進的な利上げという方針を抜本的に見直す必要が出てくる。

キャピタル・エコノミクスのチーフ米国エコノミスト、ポール・アッシュワース氏は「概して言えば、長期金利の平均は(名目GDP)成長率に近づくはずだ。現在の予算案では物価上昇を加味した名目成長率は5%と見込まれている」と指摘。トランプ政権の予算案は、長短金利のカーブが全般的に今より高かった金融危機以前の世界に戻ることを意味すると説明した。

2007─09年の金融危機以降、低成長と物価の落ち着きが定着し、FRBは政策金利を10年にわたって低水準に維持してきた。力強い成長と生産性上昇が見られた1990年代、長期金利は常に5─6%のレンジかもっと高い水準で取引されていたが、過去数年間は2─3%で推移している。

その長期金利が今後どの程度反発するのかについて過小評価すれば、即座にトランプ政権の痛手として跳ね返ってくる、と主張するのは非営利団体「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」のシニア政策ディレクター、マーク・ゴールドウェイン氏だ。今後10年間、実際の長期金利が見積もりに比べて1%高くなれば、連邦債務はおよそ1兆ドル上振れするという。

長期金利高騰は米国の金融環境も一変させる。企業や家計は、資金調達コストがほぼゼロの状況から、借り入れに相当な対価を支払う時代に適合しようとするからだ。

ゴールドウェイン氏は、予算教書で想定される金利は成長率を踏まえると低いように思われ、もっと金利が高くなって消費者や企業が借り入れを圧縮する事態が起きれば、政権が目指す3%成長を幾分損なう恐れがあるとの見方を示した。

(Howard Schneider記者)

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