焦点:「トランプ・トレード」巻き戻し活発化、政権に不透明感

2017年5月19日(金)09時20分

[ニューヨーク 17日 ロイター] - 金融市場では、米国の経済成長と物価上昇の加速に賭ける「トランプ・トレード」の巻き戻しや手じまいが活発化している。

こうした動きが顕在化したのはトランプ大統領がコミー連邦捜査局(FBI)長官を解任してからで、政治的な混乱から税制改革などの早期実現が難しくなるとの見方が広がったためだ。足元ではロシアによる米大統領選介入疑惑を巡り、トランプ氏がコミー氏にフリン前大統領補佐官に対する捜査打ち切りを要求したと伝えられたことから、米政権の先行き不透明感がさらに強まった。

その結果、米国株は昨年11月の大統領選以降で最大の下げを記録。大統領選後に5%強上昇してきたドルは、そうした値上がり分を吐き出し、向こう5年の予想物価を示す指標の1つは11月終盤以降の最低水準になった。

ガーバー・カワサキ・ウェルス・アンド・インベストメント・マネジメントのロス・ガーバー共同創設者兼最高経営責任者(CEO)は「本日をもってトランプ・トレードは終了した」と話す。同社は過去45日にわたって株を売っており、今もリスク性資産には弱気姿勢を維持。ガーバー氏によると、17日にはいつもと違って初めて機関投資家のまとまった売りが見られたという。

ウィーデンのチーフ・グローバル・ストラテジスト、マイケル・パーブス氏は「機関投資家が『米国を去る時がきた』と言っているわけではないが、さまざまな理由からいったん様子見する時期になったということだ」と述べた。

UBSセキュリティーズの米国株・デリバティブ戦略エグゼクティブ・ディレクター、ジュリアン・エマニュエル氏は、顧客が「不確実性が増したため明らかに不安を感じている」と打ち明けた。

トランプ氏が多くの政治的な問題を抱えてしまったことで、税制改革の実現までの道のりは遠くなった、と投資家はみている。

イートン・バンスのエドワード・パーキン最高株式投資責任者は「大統領選直後は、当社のアナリストに減税を想定したモデル構築を求めていたが、ここ数日でやはり現行の税率をモデルに適用すべきではないかと考え中だ」と語った。

ライアン下院議長は17日、共和党は税制改革を推進し続ける決意だが、そうした取り組みが重大な支障をきたす恐れがあると表明した。

トムソン・ロイター傘下のリッパーのデータによると、最近数週間で米国株ファンドからは112億ドルが流出し、欧州株ファンドに資金が殺到している。レーデンバーグ・タールマン・アセット・マネジメントのフィル・ブランカートCEOは「米国株のヘッジ先として外国株投資の拡大を検討している。われわれはポートフォリオを大きく修正しつつある」と説明した。

より長い目で見た場合の懸念要素として、トランプ氏が議会によって弾劾された場合の政治的な不透明感が挙げられる。与党・共和党内からでさえ、トランプ氏とロシアの関係を究明するための独立調査を求める声が増えており、1人は弾劾に言及した。

ただ大統領職をペンス副大統領が引き継ぐとすれば、必ずしも市場にとってマイナスではないかもしれない。スタンダード・ライフ・インベストメンツのグローバル・シーマティック・ストラテジスト、フランセス・ハドソン氏は「政策手法の面では(ペンス氏とトランプ氏に)大きな差はないだろう」とみている。

(Megan Davies、Jennifer Ablan記者)

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