ECBが緩和姿勢維持、総裁「下振れリスクは後退」

2017年4月28日(金)01時56分

[フランクフルト 27日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は27日の理事会で、インフレが目標を依然下回るなか金融緩和スタンスを維持したが、世界的な金融危機以降、最も好調に推移するユーロ圏景気の勢いを明確に認めた。

ECBはリファイナンス金利を0.00%に、限界貸出金利は0.25%、中銀預金金利はマイナス0.40%にそれぞれ据え置き。追加緩和バイアスを維持し、追加利下げや資産買い入れ拡大に道を残した。

ドラギ総裁は理事会後の会見で「3月の理事会以降に入手した指標は、ユーロ圏経済の循環的な回復が力強さを増していることを裏付けており、下振れリスクは一段と後退した」との認識を表明。

「同時に、基調のインフレ圧力は抑制されており、まだ明確な上向きのトレンドを示していない」とし、緩和継続の正当性を主張した。

総裁は記者からの質問に答える形で、理事会内で成長見通しについて議論があり、一部メンバーは「より明るい」見方を示したことに言及。その結果、総裁の冒頭の声明に成長見通しに対する下振れリスクは「主に世界的な要因に関連する」との一文を追加したと説明した。

こうした微妙な文言の調整について、一部では次回6月の理事会で、追加緩和バイアスを示す文言の削除など、より大胆な変更が行われる前触れと受け取る向きもある。

ドラギ総裁はインフレに関して「見通しに関するわれわれの見解を変更する十分な兆候がなく、インフレ率が持続的かつ自律的に目標と整合する水準に回帰するとの確信がまだ得られていない」と強調、慎重な姿勢を崩さなかった。

会見を受けて、金融市場は不安定な展開となった。ドラギ総裁の「下振れリスク後退」発言を好感し、ユーロ/ドルは当初1.0930ドルに急伸。だが総裁がその後、今月の理事会で緩和バイアスを取り除くことについては協議しなかったとし、金融引き締めに舵を切るにはなお障害に直面するとの認識を表明したことで、市場の動きは反転した。

ユーロは0.4%安の1.0850ドル。独10年債利回りも約4ベーシスポイント(bp)低下の0.31%となった。

ピクテのシニアエコノミスト、フレデリック・デュクロゼ氏は「仏大統領選の第1回投票も無事に終え、ユーロ圏景気が力強さを増し回復の裾野が広がる中で、ECBはコミュニケーションの調整にそれほど違和感を抱かないと想定していた」と指摘。「だが理事会は景気の勢いが増し、見通しに対する下方リスクが後退したとしながらも、政策スタンス、フォワードガイダンスのいずれも維持した」と話す。

ユーロ圏景気の改善に加え、仏大統領選の第1回投票では、親ユーロ派で中道系独立候補のマクロン前経済相が極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首を抑え、首位で決選投票に進出。極右のルペン氏と極左のメランション氏によるユーロ懐疑派の一騎打ちという最悪のシナリオは回避され、ユーロ分裂への懸念も和らいだ。

こうした状況の中、ロイターは25日、関係筋の話として、ECBが6月の理事会で、金融緩和策の解除に向け文言の変更を検討していると報道した。

アバディーン・アセット・マネジメントの投資マネジャー、ジェームズ・アセイ氏は「今回の動向は、6月に大幅な政策の変更が行なわれる可能性を十分示唆している」としながらも、「理事会内で十分なコンセンサスが得られていないのは明白で、先走りすべきではない」と述べる。

ベレンベルグは顧客向けのノートで「ECBはかたつむりのような緩慢なペースで出口に向かっている」と指摘した。

ECBは次回6月の理事会で、四半期の経済見通しを公表する。

*内容を追加して再送します。

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