日銀の長期金利調整、事前通知は困難=早川元理事

2017年4月24日(月)19時08分

[東京 24日 ロイター] - 元日銀理事の早川英男・富士通総研エグゼクティブ・フェローは24日の記者向け勉強会で、日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策について、現在「ゼロ%程度」としている長期金利目標の引き上げ条件などを事前に示すことは難しいとし、目標を変更する場合はサプライズ戦略になる可能性を指摘した。

早川氏は、長期金利目標の調整は従来の短期金利と「根本的に異なる」と強調。長期金利目標を動かす場合は、債券価格が直接変動することによって「キャピタルゲインまたはキャピタルロスが発生する。それは中央銀行の責任になる」とし、「まして直接的な利害関係者の中に政府・財務省も存在する。非常にやりにくい」と語った。

さらに長期金利目標には、政策変更の条件などを事前に示す「フォワード・ガイダンス」はなじまないとの認識を示した。

フォワードガイダンスが可能なのは短期金利だけとし、「仮に来月に長期金利を上げるといえば、直ちに動いてしまう」と指摘。長期金利目標の調整は「いったんやめたサプライズに戻るしかない」と語った。

このため長期金利目標を調整する方法として、現行10年としている年限の短期化などで対応することが考えられるとした。

もっとも長期金利目標の調整が議論になるのは「今年後半、1%の物価が見えてきた時」であり、その場合でも、エネルギー価格の変動などを除いた「物価の基調」が「上向いている必要がある」と述べた。

早川氏は、金融緩和策からの出口局面において、当座預金の超過準備に対する付利の引き上げなどで「(日銀は)年間数兆円オーダー」の巨額損失を抱えるとし、早急に損失額の試算を公表すべきと主張した。

また、日銀財務の健全性を確保するために、政府が税金によって損失を穴埋めすることは「政治的に許されない」とし、当座預金の法定準備率の引き上げによって「金融機関への利払いを圧縮すると考えるのが常識的」と語った。

(伊藤純夫 編集:田巻一彦)

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