アングル:トランプ氏の燃費規制見直し、メーカー側の勝利か

2017年3月25日(土)09時11分

[デトロイト 23日 ロイター] - トランプ米大統領は先週、オバマ前大統領時代に決まった自動車の燃費基準を見直すと表明し、「米自動車産業への攻撃は終わった」と述べた。しかし燃費の良い車を求める消費者や、輸出に厳しい基準を求められる自動車メーカーの状況を踏まえると、見直しによる影響は基準達成を数年遅らせる程度にとどまりそうだ。

見直しの対象は、2025年までに平均燃費性能を1ガロン当たり54.5マイルに倍増する基準。コストが掛かり過ぎ、雇用が奪われると訴えてきたメーカー側の勝利と言える。

ただフォード・モーターのボブ・シャンクス最高財務責任者(CFO)は23日の投資家向け電話会議で「いかなる形であれ撤回を求めているわけではない。達成すべき水準について話し合いたいだけだ」と述べた。

また、無公害車(ZEV)計画を採用するカリフォルニア州を含む10州は、前政権が決めた基準を堅持する方針。これらの州は米自動車販売の約3割を占める。

アリックスパートナーズのマネジングディレクター、マーク・ウェイクフィールド氏は、米国内で基準が2分し、「メーカーが同じ車種について2つの異なる基準に合ったバージョンを製造せざるを得なくなれば、コストが高くなるかもしれない」と懸念する。

オバマ政権時代の規準撤回を求めていた米国自動車工業会(AAM)は23日、ホワイトハウスに書簡を送り、全米の統一的な基準を維持するためカリフォルニア州との協議を早急に始めるよう促した。

<影響力小さいEPA>

センター・フォー・オートモティブ・リサーチの労働・産業グループ・ディレクター、クリスティン・ジチェク氏は、米国の基準が撤回されれば中国や欧州など、より規制の厳しい地域への自動車輸出が難しくなると予想。このため「(規則が)撤回されることはなさそうだ。せいぜい厳しい基準の達成時期が遅れる程度だろう」と言う。

アリックスパートナーズのウェイクフィールド氏は、米国が後ずさりしている間に世界最大の市場である中国が電気自動車を推進し続ければ、「米国から中国にある程度投資が移る」恐れがあると話した。

地球温暖化に懐疑的な米環境保護局(EPA)のプルイット新長官は、厳しい基準を課せば13年間で2000億ドルのコストが生じるため、消費者が支払う価格が跳ね上がり、雇用が国外に逃げる事態につながると考えている。

モルガン・スタンレーのアナリスト、アダム・ジョナス氏は、誰が政権に就いているかに関わらず、自動車業界は2022─25年の基準を達成できないと予想した上で、EPAの見直しによる影響は軽微にとどまると見る。

「燃費問題に影響しそうなすべての要因を順位付けすると、EPAは消費者の好みと技術進歩の行方に大きく差を付けられ3位に甘んじるだろう」と話した。

全米自動車労働組合(UAW)のデニス・ウィリアムズ委員長は、米自動車販売の約6割を占めるトラックとスポーツタイプ多目的車(SUV)の消費者は、燃費向上を重視していると指摘。「メーカーは後戻りする過ちを犯してはならない。われわれの使命は組合員を守ることだが、同時に将来を見据える必要があることは理解している」と述べた。

(Nick Carey、Paul Lienert記者)

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