アングル:経済要職に対金融業界タカ派を、クリントン氏に圧力

2016年10月1日(土)09時48分

[ワシントン 29日 ロイター] - 米大統領選で民主党のクリントン候補が勝利した場合、財務長官など経済関係の要職にはウォール街に厳しく対峙する人材を選ぶよう、党内の進歩派から圧力が掛かりそうだ。

「企業の力に立ち向かってきた実績のある人物かどうか」が問題だ、と語るのは草の根団体「進歩的改革運動委員会」のアダム・グリーン氏。同委員会は民主党リベラル派の旗手であるエリザベス・ウォーレン上院議員と手を結んでいる。

こうした団体はクリントン候補の選挙運動チームと会い、ビル・クリントン元大統領およびオバマ現大統領政権下の一部経済トップのような、中道的で企業寄りの姿勢ときっぱり決別するよう訴えている。

クリントン候補と同様、共和党のトランプ候補も大企業が政治を大きく左右していると批判しており、大手米銀はいずれの候補者についても懸念を示している。

<財務長官にはラスキン氏>

民主党進歩派が次期財務長官に推すのは、サラ・ブルーム・ラスキン現財務副長官。銀行の自己勘定取引を禁じる「ボルカー・ルール」の厳密な適用を支持する人物だ。

ラスキン氏は連邦準備理事会(FRB)理事だった2012年の講演で「自己勘定取引は経済価値が低い、あるいは皆無であり、暗黙の政府の保証を受けている銀行業モデルの構成要素としてふさわしくない」と述べている。

進歩派の優先課題には、米司法省が金融機関だけでなくバンカー自体にも刑事罰を科すよう求めていくことも含まれている。

<サンドバーグ、ブレイナード両氏は警戒>

財務長官候補の中で民主党進歩派が警戒するのは、フェイスブックのシャリル・サンドバーグ最高執行責任者とブレイナードFRB理事の2人で、ビル・クリントン、オバマ両政権とのつながりがその理由だ。

サンドバーグ氏はクリントン政権下で当時のサマーズ財務長官の首席スタッフを務め、ブレイナード氏はガイトナー前財務長官の次官だった。

トランプ氏との闘いで手一杯のクリントン氏は、経済ポストの人材選びについてほとんど発言していない。

進歩派は民主党候補選でクリントン氏反対に回ったため、同氏が彼らに耳を貸す義理はない。しかし無視すれば政権の出だしで党内に亀裂が入る恐れがある。

進歩派が証券取引委員会(SEC)委員長に推すのは、SEC委員のカーラ・ステイン氏と、国際通貨基金(IMF)元首席エコノミストのサイモン・ジョンソン氏の2人だ。

クリントン氏の顧問を務めるギャリー・ゲンスラー氏も、商品先物取引委員会(CFTC)委員長時代の硬派な姿勢が評価され、進歩派から要職就任を望まれている。

<後悔>

経済政策研究センターの「回転ドア・プロジェクト」ディレクター、ジェフ・ハウザー氏によると、進歩派はオバマ大統領に対し、金融規制改革推進派を任命するようもっと圧力を掛けるべきだったと「後悔」している。

ウォーレン上院議員は先週の講演で、クリントン氏が大手投資銀行出身者を選ばないよう釘を刺した。

「ヒラリーの大胆な議題にリップサービスだけしておきながら、やれやれとため息をつき、次に回転ドアが回るまで公職で時間をつぶし、他でもない自分が監督した業界に戻っていくような」人物は望ましくない、と議員は述べた。

(Amanda Becker記者)

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