アングル:WファーゴCEOの報酬返上が米金融界に波紋

2016年9月30日(金)08時20分

[ニューヨーク 28日 ロイター] - 米銀行大手ウェルズ・ファーゴは、一部の従業員が顧客に無断で200万もの口座を開いた問題をめぐり、ジョン・スタンプ最高経営者(CEO)に4100万ドル相当の株式報酬を返上させることを決定した。これを受けウォール街では、企業の不正行為に対する政治的な風当りから取締役会が役員報酬の回収に一段と積極的になるとの懸念が高まり、波紋が広がっている。

米政界では、銀行の役員報酬に関する新たな規則の見直しが進められている。銀行関係者の懸念は、ウェルズ・ファーゴの不正問題により報酬に関する新たな規則が厳格化されるだけではなく、取締役会が政治的な反発を回避するために規制の枠組みからさらに踏み込んで厳しく対処する事態だ。

ハーバード法科大学院のジェッシー・フリード教授は「ウェルズ・ファーゴの取締役会は、問題が大きく広がるまでCEOの報酬の一部を回収しなかったことで過ちを犯した」と指摘。「他社の取締役会はこの過ちから学び取ることになるだろう」と述べた。

米規制当局は、銀行が上級幹部に対する報酬を遅らせて支給することを義務付け、過去7年間にわたって不正があった場合に報酬を回収できるようにする規制の策定を進めている。この法律は2019年に施行される予定であり、当局は新大統領が就任する来年1月より前に規制を最終決定する方針だ。

銀行の法律顧問らは、ウェルズ・ファーゴの不正問題の結果として、規制の提案に従来より厳しく具体的な要件が盛り込まれるのではと心配している。例えば、不正が発覚してから30日以内に報酬を回収することを求めるなど、迅速な対応が義務付けられる事態が考えられるという。

2008年の金融危機を受け、すべての米大手銀行が役員にリスクテークの責任を負わせることを主眼として報酬返上に関する規定を導入もしくは強化した。だが報酬返上の対象期間は3年程度の場合が多く、現在の規制案で設定された7年の半分にも満たない。

(Olivia Oran、Ross Kerber記者)

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