アングル:再稼働遅れで原発燃料統合へ、GEの戦略転換も影響か

2016年9月29日(木)18時01分

[東京 29日 ロイター] - 日立製作所、東芝、三菱重工業の原子炉メーカー3社が原発で使う燃料事業の統合を目指すことになったのは、国内での原発再稼働の遅れに加え、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の燃料事業の戦略転換が影響していると一部の電力関係者は指摘する。ただ、今回の燃料事業の統合構想が原子炉3社の再編に発展するかどうかは不透明要素が多く、予想は難しい。

<燃料事業、崩れる棲み分け>

今年5月下旬、GEが60%出資するグローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)が、ロシア国営の原子力企業ロスアトム傘下のTVELフュエルと提携し、加圧水型原子炉(PWR)向けの燃料の製造で協力すると発表した。

沸騰水型原子炉(BWR)を手掛けるGEが、既設・新規建設数ともに多数派の加圧水型燃料にビジネスを広げる狙いが浮き彫りになった案件だ。GNFには日立が26%、東芝が14%出資している。

ある電力会社幹部は、この動きが今回の国内原発燃料の統合構想にも影響を与えたと指摘する。同幹部は「(米国では従来)GEがBWR燃料を、ウエスチングハウス(WH)がPWR燃料をそれぞれ製造し、厳然たる垣根があった。ただ、今後は廃炉が増え、新増設が難しくなると見込んでGEが加圧水型燃料にも手を伸ばした」と述べた上で、「国内の燃料事業はGEに統合されていくのではないか」と予想する。

米メーカーの燃料事業の戦略転換に日本の原子炉メーカーが影響を受けるのは「日本が米国から技術導入してきた」(同電力幹部)ことが背景にある。

ただ、GEが日本の原発燃料事業を巻き込んで統合していく場合、東芝が10年前に買収したWHが合流するのかどうか、また、合流する場合は、競争法上の問題が出てこないのかといった不透明要因が残りそうだ。

<原発停止長期化、特需と需要激減のいびつな構図>

5年半前に起きた東京電力福島第1原発事故を契機に国内の電力供給の約3割を担った日本の原発は軒並み停止した。3年前に施行された新しい規制基準に基づく審査も長期化し、原発再稼働のペースは電力各社の想定から大幅に遅れている。

東電など原発を持つ電力会社10社が新規制基準などに対応するための安全強化投資は累計で3兆円を超す規模に上る見通しだ。これらの工事や機器の需要は現在、「原子炉メーカーにとって特需」(メーカー関係者)になっている。

一方、原発の停止が長期化しているため燃料の消費は進まず、燃料事業の収支は大幅に悪化している。「このまま再稼働が進まなければ、統合した燃料会社の市場価値はゼロだ」(金融関係者)と辛辣な意見も聞かれる。

福島の事故に伴い国内では原発の新増設は依然として困難とみられる一方、推進側が期待した原発輸出も1基当たり1兆円を超えるなど、数年前に比べて大幅に高騰し、各地でプロジェクトの遅れが目立つ。

こうした「原発冬の時代」を背景に国内原子炉メーカーの再編も取りざたされるが、「利害関係が複雑で、とても数年間でまとまるような案件ではない」(業界関係者)との見方が根強い。

前出の電力幹部は「再稼働に向けた安全投資が一巡すると、原子炉メーカーも再編に向かうのではないか」と予想している。

(浜田健太郎 編集:石田仁志)

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