アングル:日米両サイドで弱まる円安期待、薄氷の1ドル100円防衛

2016年9月23日(金)19時06分

[東京 23日 ロイター] - 日米中銀会合の2大イベントを通過し、ドル/円に下落圧力がかかっている。日銀は金融政策の新たな枠組みを導入したが、金融緩和余地は大きくないと市場は受け止めている。米連邦公開市場委員会(FOMC)も利上げを見送り、先行きの金利予想を引き下げた。

1ドル100円割れはいったん回避されたものの、心理的節目をめぐる攻防は続きそうだ。

<日銀新スキーム効果に疑問>

日銀が金融政策の新たなスキームを発表した後、ドル/円は、いったんショートカバーが先行し102.79円に上昇した。しかし、持久力に乏しく、21日の市場では、100.30円まで下押し、22日は100.10円と大台割れ寸前までに軟化した。

市場では、今回導入した日銀の新スキームにおいても、追加的な金融緩和は容易ではないとの見方が多い。マイナス金利の深掘りが今後の追加緩和の手段となりそうだが、「先行する欧州中央銀行(ECB)の議論を見ても、金融機関の収益への影響の観点からも、金利の下げ余地は大きくない」と、あおぞら銀行の市場商品部部長、諸我晃氏は指摘している。

ECBのマイナス金利は現在0.4%。日銀はマイナス0.1%であり、ECBの水準まで深堀りするにしても余地は0.3%ポイントしかない。

さらに日銀がマイナス金利を深堀りした場合、そのままなら長期金利も低下する可能性が大きいが、今回決めたように長期金利をゼロ%付近に固定しようとするなら国債購入の量を縮小せざるを得なくなるかもしれない。「事実上のテーパリングと受け止められて嫌気されれば、円買いが強まるおそれもある」(国内金融機関)という。

<米側にも円高リスク材料>

日本が休日だった22日午後、財務省と金融庁、日銀が3者会合を開き、出席した浅川雅嗣財務官が「仮に投機的な動きが続くなら、必要な対応を取らざるを得ない」と発言。為替介入も辞さない姿勢を示したことが伝わると何とか1ドル100円の大台割れは回避された。足元は、欧米株高を受けたリスク選好の円売りにも救われ、100円後半まで値を戻している。

国際的に非難を浴びるかもしれない実弾の為替介入は難しいとの見方が市場でも多いが、「株安や円高が急激に進行すれば、日銀が追加緩和するかもしれない」(邦銀)との警戒感もくすぶる。ドル/円で90─95円、株価1万5000円となれば警戒水位との見立ても聞かれる。

イベントを通過したことで、ドル/円のインプライド・ボラティリティ(予想変動率)は低下しており、「一気にドル安方向に突っ込んでいく様子ではない」(りそな銀行のクライアントマネージャー、武富龍太氏)とみられている。

ただ、米側のドル高・円安材料も大きく後退している。21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、利上げを見送り、先行きの金利見通しも引き下げられた。金利先物が織り込む12月利上げの見方は依然50%超だが、長期的な米金利の「天井」が低くなる中では、12月に利上げが実施されたとしても、先行きの利上げに期待がつながらなければ、ドル高・円安方向の力は弱いかもしれない。

さらに米国には大統領選挙という円高材料になりかねないリスクイベントが控える。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト、植野大作氏は「クリントン候補とトランプ候補の支持率が逆転するようなら、あらためて100円割れのリスクがある」と指摘する。26日(日本時間27日午前)の第1回テレビ討論会に注目が集まりそうだ。

(平田紀之 編集:石田仁志)

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