物価2%早期実現へ今後も3次元緩和を総動員=布野日銀審議委員

2016年8月31日(水)12時06分

[新潟市 31日 ロイター] - 日銀の布野幸利審議委員は31日、新潟市内で講演し、物価2%目標の実現は道半ばとし、今後も早期実現を目指して量・質・金利の3つの次元の緩和手段を総動員していく、と語った。

布野委員は、日本経済の将来のためには「定着してしまったデフレマインドの転換を進める必要がある」との見解を示した。

そのうえで、日銀が掲げる2%の物価安定目標の実現への道筋は「なお道半ばにある」とし、「目標の早期実現を目指し、量・質・金利の3つの次元の緩和手段をすべて動員して、しっかりと金融緩和を推進していきたい」と語った。

物価情勢については、生鮮食品を除く消費者物価(コアCPI)の前年比が「エネルギー価格下落の影響から、当面小幅のマイナスないしゼロ%程度で推移する」としたが、「物価の基調は着実に高まり、プラス2%に向けて上昇率を高めていく」との見方を示した。

中長期的な予想物価上昇率は「このところ弱含んでいる」としながら、賃金上昇を伴って物価上昇率が緩やかに高まっていくメカニズムは「引き続き作用している」と主張。予想物価上昇率も「上昇傾向をたどり、2%程度に収れんしていく」との見通しを示した。

個人消費は「次第に底堅さを増していく」が、足元で所得から消費への循環が「緩慢な動き」となっており、今後の進展に注意が必要と語った。円高進行や原油価格の上昇が設備投資に与える影響については、維持・更新投資や効率化・省力化投資などは「短期的な収益動向に左右されにくい。収益環境の変化の影響は比較的少ない」との見方を示した。

もっとも、英国の欧州連合(EU)離脱問題をめぐる不透明感や中国など新興国・資源国経済の動向など海外情勢を中心に「先行きのリスク要素は多岐にわたる」とし、「幅広い視点から注視していく必要がある」との認識を示した。

日本経済の課題について、人口減少を背景として将来に「漠とした不安が漂っている」ものの、「前向きに未来を考える余地が十分にある」と強調。アジアの成長を取り込むことで需要不足への対応が可能と述べるとともに、供給面でも女性や高齢者の活用のほか、「さまざまな分野で徐々に外国人労働者を受け入れるのも選択肢」と語った。

そのうえで、民間部門は、政府・日銀による経済対策や緩和的な金融環境を活用し、「積極的に構造改革を推し進めるべき」と対応を促した。

(伊藤純夫 編集:田中志保)

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