インタビュー:米国株強気継続、日本株は円高で慎重=PGI

2016年8月26日(金)22時16分

[東京 26日 ロイター] - 米資産運用大手プリンシパル・グローバル・インベスターズ(PGI)のチーフ・グローバル・エコノミスト、ボブ・バウアー氏は、ロイターとのインタビューで、史上最高値圏で推移する米国株について、引き続き強気スタンスでの運用が適切と考えを示した。

米国の景気や企業業績は底堅く、株価に割安感はないものの当面堅調さを維持しそうだという。

理由として、6月の英国民投票で欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が決まり、米連邦準備理事会(FRB)が早期利上げを見送ったことが、米国や新興国のリスク資産への思わぬ追い風になったと指摘した。

PGIは米アイオワ州デモインに本拠を置く資産運用会社で、6月末の運用資産総額は4027億ドル(約41兆円)。

インタビューはバウアー氏が来日した25日に東京で行った。概要は以下の通り。

――市場は今週末のジャクソンホールでのイエレンFRB議長講演を注視している。

「フィッシャー副議長やダドリー・ニューヨーク連銀総裁が立て続けに早期利上げの『地ならし』的発言を行った後でもあり、私はイエレン議長のスピーチはややハト派的寄りになると予想する。米経済は好調でありFRBは利上げを続ける必要があるが、直ちにというわけではない、といったトーンになろう」

「9月の利上げはないとみている。12月については可能性があるものの、それもまだ確実ではなく、次の利上げは来年となる可能性も大いにあると考えている」

──米大統領選に影響することを嫌って9月利上げを避けるという側面もあるのか。

「FRBが大統領選に影響を及ぼすことを望まないのは確かだが、最新の世論調査でクリントン前国務長官(民主党)がトランプ氏(共和党)を大幅にリードしていると伝わっており、それが今回9月利上げを避ける主な理由とは思わない」

「結果的にどちらが大統領となるかわからないが、クリントン氏であれば政策は従来路線から大きく変わらないだろう。一方、トランプ氏が大統領になった場合、外交政策は同盟国を不安にさせているようだが、実は経済政策には米国企業の国内回帰を促す法人税制改革など経済に非常にポジティブなものもある」

「いずれにせよ11月の選挙までまだ2カ月半あり、基本的には大統領選は(ブレグジットのような)サプライズイベントとならず、マーケットが今後の世論調査結果を見ながら状況を徐々に織り込んでいくと想定している」

──米国株は史上最高値圏で推移しているが、割高感・過熱感はないか。

「バリュエーションは高水準にあり、米国株は決して割安とは言えない。しかし過去を遡れば、1960年代後半や90年代前半など、バリュエーションが数年にわたって高止まりしたことは何度かある」

「今回の株高は、資源価格の回復に伴い、エネルギー・コモディティ関連企業が一時の業績悪化から立ち直ってきたことが背景だ。現在は資源価格が持ち直しており、FRBもまだ追加利上げに慎重ななかドルの流動性も十分あり、さらに低金利環境も手伝って、業績への追い風は続くだろう。この先1年か1年半程度は持続可能ではないか」

「それらは米国株と新興国株にとって大いにポジティブな環境といえる。それゆえ、バランス型ポートフォリオでは米国と新興国の株式をややオーバーウエートしたい」

──景気サイクルの観点からは、そろそろ米経済がリセッションに陥るとの見方もある。

「たしかに、今回のサイクルは09年7月から始まり、景気拡大期も既に8年目と、歴史的に見て過去3番目に長いサイクルとなっているが、向こう12カ月以内に景気後退入りするとはみていない」

「通常、過剰債務や過剰生産能力が問題を招く主因となる。こうした問題は中国では顕著だが、サービス業中心の米国にはそれがみられない。家計にも企業にも高揚感はなく、むしろ悲観的であり、(景気拡大)ペースは非常に緩やかだ」

──日本と欧州の株式についてはどうか。

「日本は通貨高(円高)、欧州についてはブレグジットという向かい風がある。このため、米国や新興国と比べて明らかに一歩魅力が劣るので、ややアンダーウエートしたい」

「為替については、14年6月から16年1月に急伸したドルは、来年にかけて割と狭いレンジで推移するとみており、現水準を大きく超えたドル高もドル安も見込んでいない。これは世界経済にとってポジティブ。ただ、対円での動きについては予想が難しい」

──債券についてはどうか。

「まず、国債については非常に割高であり、アンダーウエートしたい」

「一方、社債はオーバーウエート。1─2年前と比べてスプレッドも乗っており、環境を考えれば今後タイトニングする余地があり、ハイイールド(高利回り)債・投資適格債ともに投資妙味がある」

(インタビュアー:植竹知子 編集:伊賀大記)

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