アングル:豪州に忍び寄るデフレの影、小売店で値下げ常態化

2016年7月26日(火)11時28分

[シドニー 25日 ロイター] - オーストラリアは小売店間の価格競争激化で値下げが常態化しており、デフレの影が忍び寄りつつある。オーストラリアはまだ物価が全面的に下落する完全なデフレ状態には陥っていない。しかし各種データからは大方の見方よりもデフレの危険が迫っていることが読み取れる。

重要なのは値下げの拡散ぶり。価格低下は消費者にはありがたいことだが、買い控えが広がれば日本型のデフレに落ち込むとの懸念が一部で浮上している。

コモンウェルス銀行のチーフエコノミスト、マイケル・ブライズ氏は「まだデフレ状態ではないが、低インフレ状態があと数年間が続けば人々の物価見通しに反映され、デフレに陥る」と話す。

背景には外資系企業の市場参入による小売り大手間の価格競争激化がある。

複合企業ウェスファーマーズ傘下のコールズや最大手ウールワースなどのスーパーマーケットは値下げが当たり前になった。

コールズのマネジングディレクターのジョン・ダーカン氏は「今後5年間は値下げが続くだろう」と話す。

米インターネット小売り大手アマゾン・ドット・コムが来年、うわさ通りオーストラリアの食品サービス市場に参入すれば、値下げ競争は一段と激しさを増しそうだ。

オーストラリア経済は、表面的には問題はないようにみえる。今年3月までの1年間の国内総生産(GDP)は3.1%増と高い成長率を達成し、失業率は6%を割っている。

しかしインフレと賃金の伸び率はいずれも過去最低水準だ。1─3月期の消費者物価指数(CPI)は前期比でマイナスとなり、世界金融危機が発生した2008年以来で初の低下となった。小売売上高は低迷し、消費者信頼感指数も悪化している。

企業は販売価格の低迷で利幅が低下し、コスト削減を迫られている。経済全体に節約ムードが広がり、賃金、雇用、投資、調査、出張などの支出がすべて削られている。

27日発表の4─6月期CPIはインフレがさらに鈍化したことを示しそうだ。

シティのチーフエコノミストのポール・ブレナン氏は「労働市場からは低インフレ状態が根付いた兆しが読み取れる」と指摘。企業は世界的に価格競争力を失い、賃上げに抵抗しているとした。

その上で「既に債券市場は世界的に低成長、低インフレ環境を織り込んでおり、オーストラリアもこうした流れと無縁ではいられない。つまりオーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)は景気が比較的良好であっても政策金利を世界的な水準まで引き下げざるを得ないだろう」と述べた。

(Wayne Cole、Swati Pandey記者)

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