アングル:中国の債務拡大、成長伴わず危機の温床に

2016年7月26日(火)11時27分

[北京 24日 ロイター] - 中国の企業債務が経済成長率を大幅に上回る勢いで拡大している。非効率な国有企業向けの与信が多く、成長に結びついていないためだ。

今年上期の中国の成長率は6.7%と、第1・四半期のペースを維持した。政府が断固として景気減速のペースを制御しているためだが、これは危うい債務拡大という代償を伴う。

モルガン・スタンレーの計算によると、中国の成長率が平均11%を超えていた2003─08年にかけて、国内総生産(GDP)を1元増やすのに必要な信用創造はちょうど1元だった。

それが、世界金融危機を受けて政府が大規模な景気対策を行った09年から10年には、1元の成長に必要な信用創造が2元に増え、15年には4元に、そして今年は6元へと、さらに増えているという。

現在の水準は、金融危機前の住宅バブル期の米国に比べても2倍に相当する。

モルガンの新興国市場責任者、ラシール・シャルマ氏は、「中国ほどのペースで債務を増やした発展途上国は、歴史を振り返っても見当たらない」と指摘。政府の財政・金融刺激策の効果は急速に衰えており、これにデフォルト(債務不履行)の拡大、不良債権の増大が加わって「何らかの事故が起こる温床」が育っていると警告を発した。

与信規模を示す最も幅広い指標の社会融資総量は、今年上期に10.9%増えて9兆7500億元となった。

<短期志向>

マネーサプライも同様に増えて149兆元に達し、経済規模が約6割も大きい米国を73%上回っている。

米クレスキャット・キャピタルのケビン・スミス最高経営責任者(CEO)は「中国は世界一大量のお金を刷っている国だ」と言う。

大規模な与信が成長に結びつかないのは、効率の良い民間企業ではなく主に国営企業に資金が流れているからだ。銀行は安全性の高い国有企業向けの与信を優先している。

中国国際金融有限公司(CICC)のアナリストの推計によると、今年第2・四半期、民間企業向け銀行融資の金利は国有企業より6%ポイント高かった。

中国は表向き、非効率な重工業の過剰設備を削減して民間セクターに軸足を移す方針を掲げているが、目先の成長率達成を優先しているのが実情だ。

政策担当者らは、企業債務が高水準でも政府部門には債務を拡大して財政支出を増やす余地がある、と主張している。

ファソム・コンサルティングのアナリスト、ローラ・イートン氏はリポートで「中国の短期志向は、過剰生産能力と不良債権という長年の問題を悪化させるだけだ」と批判した。

クレスキャットのスミス氏は、こうした状態がいずれ人民元と銀行という双子の危機を引き起こし、元は対ドルで20%暴落すると予想。「問題はその時期だが、かなり近い将来に訪れそうに思える」と語った。

(Elias Glenn記者)

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