G20が政策総動員を再確認、英離脱で不透明感 為替安定を共有

2016年7月24日(日)20時30分

[成都(中国)/東京 24日 ロイター] - 中国・成都で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は24日午後、英国の欧州連合(EU)離脱決定で不透明感が増した世界経済の成長確保に向け、各国による政策総動員の重要性を再確認して閉幕した。

為替については、過度の変動や無秩序な動きは悪影響を及ぼすとする前回4月のワシントンG20の認識を踏襲した。

<世界経済に下方リスク、円滑な英離脱交渉を期待>

英国のEU離脱決定後、初めて開かれた今回のG20では、英離脱に伴う世界経済や金融市場への影響をめぐる議論に関心が集まった。

G20は共同声明で、世界経済の現状について「回復は続いているが、望ましい水準よりも弱いままだ。下方リスクは根強く残っている」との認識を示し、英離脱決定によって「不確実性を増している」と警戒感を強めた。

会議に出席した英国のハモンド財務相は会見で、EUとの交渉の進め方が明確になることを前提に、離脱をめぐる不透明感が「年内にも緩和される」との見通しを示したが、英離脱問題が当面、世界経済のリスクとして意識される可能性が大きい。

声明では、G20各国が英離脱問題に伴う影響に対処する態勢を整えていることを強調し、「将来的に、英国がEUの緊密なパートナーである姿に期待している」と表明。今後の英国とEUの交渉が円滑に行われることに期待感を表明した。

こうした認識を踏まえ、会議では世界経済の持続的な成長に向けて各国が金融、財政、構造改革という政策手段を「個別または総合的に用いる」ことが再確認された。

引き続き「金融政策のみでは均衡ある成長につながらない」と金融緩和偏重に警鐘を鳴らしながら、構造改革と財政政策の重要性を強調。機動的な財政政策にも言及した。

麻生太郎財務相は今回のG20会議で、総合的な経済対策を取りまとめていることを各国に紹介するとともに、財政健全化の方針に変わりはないと説明。米国のルー財務長官は米国の財政赤字は減少しているとし、財政政策について「強い立場で取り組むことができる」と語った。

<為替安定の重要性、日本が主張>

為替に関しては「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済および金融の安定に対して悪影響を与える」との従来方針を踏襲した。

英国のEU離脱決定を受けた円高進行が日本経済の大きな懸念材料となる中、為替安定に向けた認識の共有を麻生財務相が主張した。同財務相は「足元の為替市場の動向を踏まえ、為替レートの安定が重要であることをあらためて確認したものだ」と強調した。

同時に会議では、通貨の競争的な切り下げ回避や、競争力強化のために為替レートを目標としないことも再確認された。

<鉄鋼の過剰生産、世界的な課題>

また、G20は鉄鋼産業などにおける過剰生産を「世界的課題」と位置づけた。過剰生産能力を抱える中国が念頭にあるとみられ、G20の鉄鋼生産国が9月開催予定の経済協力開発機構(OECD)鉄鋼委員会に参加するなど「世界の過剰生産能力に対処するための国際社会の行動に参加する」ことを明記した。

(伊藤純夫 梶本哲史 編集:山川薫)

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