日銀7月会合で迫られる追加緩和、金利大幅低下は弊害=早川元日銀理事

2016年6月29日(水)16時38分

[東京 29日 ロイター] - 元日銀理事の早川英男・富士通総研エグゼクティブ・フェローは29日、物価下振れが必至とみられることなどから、日銀が7月28、29日に開く金融政策決定会合で追加緩和をせずに乗り切るのは「かなり厳しい」との見解を示した。国債買入やマイナス金利という手段にも限界があるとし、緩和策は貸出支援制度へのマイナス金利適用や上場投信信託(ETF)など質的拡充の可能性を指摘した。

都内で開かれた記者向け勉強会で語った。

早川氏は日銀の追加緩和の可能性について、英国の欧州連合(EU)離脱決定による影響は分けて考える必要があると指摘。離脱決定を受け金融市場は不安定になっているが「経済への短期的な影響はさほど大きくない。足元の市場の反応はやや過剰反応」とし、これを理由に日銀が臨時会合を開き政策対応を決めることは「ないと思う」と語った。

一方、日銀が掲げる物価2%目標の実現に不透明さが増すなか「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表する7月末の会合は「ハードルが高い」とみている。

日銀は現在、2017年度中に消費者物価(生鮮食品除く、コアCPI)が2%に達すると見込んでいるが、日銀が想定する17年度平均のコアCPI1.7%は「無理筋」とし、エネルギーも除いた日銀版コアコアCPIも先行き下落が見込まれることから、日銀が重視する「物価の基調」も「しっかりしているとは言えなくなる」との見方を示した。

さらに英国のEU離脱決定で米国の7月利上げの可能性も消えたとし、円高圧力が継続するなかで「援軍もなくなった」と語った。

このため、日銀が7月末の会合で「追加緩和をやらないで済ますのは、かなり厳しい」と指摘。効果を含め大規模な国債買入やマイナス金利政策にも限界があることから「日銀は追加緩和をできればやりたくないと思っている」との見方を示し、追加緩和手段として貸出支援制度のマイナス金利適用や質的な面での緩和が選択肢となる可能性を指摘した。

マイナス金利政策の導入以降、量的・質的金融緩和(QQE)による大規模な国債買入と相まって長期金利がマイナスに沈み、超長期金利も低下するなどイールドカーブのフラット化が進行。

日銀は金利低下を政策効果と説明しているが、早川氏はフラット化によって金融機関が融資を拡大するインセンティブが低下しているとし、大幅な長期・超長期金利の低下は現行のマイナス金利付きQQEの「弊害」であると断言した。

(伊藤純夫 編集:田中志保)

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