アングル:英EU離脱への対応、出遅れ目立つ米企業 

2016年6月28日(火)08時53分

[ニューヨーク/シカゴ 26日 ロイター] - 英国の欧州連合(EU)離脱のリスクは1年以上も前から報じられていた。しかし米国では緊急対応計画を策定していた企業ですら「ブレグジット」の現実化に衝撃を受け、影響の分析に着手したばかりというありさまだ。

米企業の一部は完全に虚を突かれ、ポンド安に備える為替ヘッジに殺到している。法律事務所は今後貿易協定や規制がどんな影響を受けるかについての米企業からの問い合わせが急増し、英国民投票後に専用回線を設けた法律事務所もある。

デチャートで国際貿易・政府規制を担当するミリアム・ゴンサレス氏によると、金融や保険など規制の厳しい業界はブレグジットへの備えが比較的進んでいるが、「他の業界のほとんどは準備が全くできていない。衝撃は非常に大きく、現段階では企業の多くはこの問題をなかなか消化できずにいる」という。

家庭用芝刈り機などを製造するアリエンスのダン・アリエンス最高経営責任者(CEO)は「様子見状態で、少々無防備だった」と話す。同社は英国に工場を持ち、昨年の売上高はおよそ7億ドル。CEOは「(英国の)事業の価値が低下した」と嘆く。

ハイテク家具で知られるハーマン・ミラーは今年の世界的なリスクとしてブレグジットを想定。半年前からは英国で客足が鈍っていることを把握していた。にもかかわらずブライアン・ウォーカーCEOがブレグジットに関する法的な記事を読み、英国はEU離脱に伴って全ての貿易協定を結び直す必要があって手続きには最大2年かかると知ったのは24日のことだった。

ウォーカーCEOは「これからどうなるのか非常に不透明で、今も分からないことがある」と述べた。

英国で操業する米企業にとって主要な課題の1つが、英国が単一市場に残るのかどうかという問題への取り組みだ。製造業者は英国からEU加盟国への製品輸出に税金が課せられ、通関手続きが必要になれば、コストも時間も余計にかかり、欧州の競合相手に対して不利になる。

ドル高ポンド安も頭の痛い問題だ。例えばアリエンスは米国製の部品を英国で組み立てており、ポンド安によって部品のコストが上昇する。このため値上げしなければ業績が悪化しかねない。

(Timothy Aeppel、Nick Carey記者)

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