焦点:閑散とする中国株・短期金融市場、政策不透明感で様子見

2016年5月31日(火)08時35分

[上海 27日 ロイター] - 中国では金融政策と景気に先行き不透明感が強まっているため、株式と短期金融市場で様子見気分が広がり、取引が細っている。

中国共産党機関紙の人民日報が今月、負債による景気刺激に頼り過ぎると中国は金融危機に陥りかねない、とする「高官」の発言を報じて以来、株価は低迷している。

中国の経済指標は3月に上向いたものの、その後は回復が短命に終わる兆しが示された。高官の発言は政策当局上層部における意見対立の表れだと見る専門家もいる。

中国人民銀行(中央銀行)の金融政策分析チームは26日、同行が「やや緩和的で概ね慎重な」政策を維持するとの記事を公表したが、投資家は警戒を解いていない。

上海株式市場の出来高は約5カ月ぶりの低水準に落ち込み、短期金融市場は動意が薄れている。指標となる7日物債券レポ金利は昨年11月以来、2.3%前後で推移している。

上海の銀行の流動性トレーダーは「市場は狭いレンジ内で上下している。経済ファンダメンタルズに大幅な改善は見られず、朗報はない」

と話した。

UOBケイヒアン(香港)のディレクター、スティーブン・ラング氏は、景気動向によほどのサプライズがない限り、中国本土、香港ともに株式市場は9月まで低調な取引が続くとの見方を示した。

<次の一手>

投資家にとって最大の関心事は、人民銀行が物価バブルを煽ることなく景気回復を支える措置を講じるか否かと、その手段だ。既に不動産やコモディティ先物だけでなく、ニンニクなど日用品の価格でもバブルが再燃しつつある。

こうした中、預金準備率(RRR)を引き下げれば数十億元の資金が解き放たれ、株式投資家は喜びそうだ。しかし慎重姿勢を強めている人民銀行はRRR引き下げという手段を選ばず、短期の資金供給に重点を置くことで、投機家を勢いづかせずに特定の銀行に資金を届けようとしている。

国信証券の債券アナリスト、ドン・デツィ氏は「市場ではRRRの早期引き下げ予想が大きく後退した。人民銀行はこれに代わる新たな政策手段を使っているのだと、市場ははっきり感じ取っている」と述べた。「人民銀は銀行システムに過剰な長期流動性を注入することを躊躇しているようだ」という。

一部のエコノミストは、年内にあと数回追加利下げが実施されるとの見方も後退させている。人民銀行はこの1年弱で6回にわたり利下げを実施してきた。

人民銀行は、金利やRRRを引き下げれば人民元への下落圧力と資本流出が再燃しかねないと懸念している模様だ。

米連邦準備理事会(FRB)の早期利上げ観測を反映し、人民元は5月に約1.5%下落して1ドル=6.56元前後となった。

これに伴い資本流出が再燃するなら、人民銀行は国内のマネーサプライを補うためRRRの引き下げを迫られかねないところだ。しかし中国の外貨準備は4月に3兆2200億ドルに増加しており、資本流出は一服している。

(Lu Jianxin and Pete Sweeney記者)

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