4月米雇用統計は想定内、インフレ加速なら6月利上げも

2016年5月7日(土)07時14分

[ワシントン 6日 ロイター] - 4月の米雇用統計で雇用の伸びが予想を下回り賃金が増加したことは、米経済が完全雇用に近づく中、米連邦準備理事会(FRB)にとっては想定内の結果であり、利上げ軌道の変更に結びつく公算は小さいだろう。

4月は非農業部門雇用者数が16万人増と、7カ月ぶりの低い伸びにとどまり、伸びは市場予想の20万2000人増、および第1・四半期の月平均である20万人増を下回った。

少なからぬ投資家が今回の統計をFRBにとり危険信号とみる一方で、一部のアナリストは、とりわけ賃金増がインフレ加速につながれば、FRBが6月にも利上げに踏み切ると予想している。

米ニューヨーク連銀のダドリー総裁もニューヨーク・タイムズ(NYT)紙とのインタビューで、今回の雇用統計をさほど懸念していないとし、年内2回の利上げは引き続き「妥当な予想」との考えを示した。

「予想よりやや弱めだが、私の経済見通しへの影響という点において、それほど重要視しない」としている。

コンサルタント会社キャピタル・エコノミクスの米経済担当チーフエコノミスト、ポール・アシュウォース氏は「毎月20万人の雇用増ペースが永久に続くことはない。これは持続不可能だ」と話す。

実際に、FRB当局者は昨年終盤から、雇用の伸びは今後鈍化するとの見方を示しており、イエレンFRB議長は、人口の伸びに即した経済成長ペースを維持するのに月10万人の雇用増で十分だと指摘している。

つまりそれ以上の雇用増は、労働市場の「スラック(需給の緩み)」が依然吸収されていることを示す。だが4月の雇用統計は、この残る緩みが解消しつつある可能性を示唆している。

4月は労働参加率が小幅低下した。これは米国の高齢化を踏まえた長期トレンドだとみているFRB当局者の見解に一致する。労働参加率が最近、上昇傾向にあったことは、求職断念者が労働市場に復帰する時間的猶予を与えるためにも低金利を維持する必要があるとするイエレン議長の主張を裏付けていた。一方で、労働参加率はある時点でおそらく頭打ちか、反転する可能性が高いとも考えられている。

<焦点はインフレ>

経済的理由でパートタイム職に就いている人の数は600万人強と、2007━09年の金融危機・リセッション(景気後退)前の水準を依然50%上回る。また過去半年以上、その水準近辺にとどまっている。進展が停滞したか、雇用主が一部の職で正社員雇用を止めたことがうかがえる。

エコノミック・ポリシー・インスティチュートのアナリスト、エリス・グールド氏は、4月の雇用統計を受けて、FRBは雇用市場の回復が完了したと確信できるまで、利上げを見送るべきだと主張する1人だ。「目先の利上げを促すものはない」と指摘する。

今後の焦点は月末に公表されるインフレ統計だ。

イエレン議長は最近のインフレ加速について、持続的なトレンドか確信できないと述べている。だが足元で主要なインフレ下押し要因は後退しつつあるようだ。原油はバレル当たり40ドル台に回復、ドルは主要通貨バスケットに対し下落した。

これに加え、賃金増の兆しが出てきた。4月は時間当たり賃金が前月比0.3%増、前年比では2.5%増となった。

エドワード・ジョーンズの投資ストラテジスト、ケイト・ウォーン氏は「雇用増が賃金を押し上げる構図が出始めている。6月利上げの理由を探すとすれば、この賃金が上向いているという点だろう」と話す。

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