アングル:ドバイや英学生寮、中国マネーが狙う海外格安物件

2016年3月14日(月)08時07分

[香港 9日 ロイター] - 世界各地の大都市で不動産の価格高騰を招いたチャイナマネーは、従来の領域を超えて、ドバイの土地や英マンチェスターの学生住宅のような格安で高いリターンの見込める物件に触手を伸ばしている。

中国の買い手は、裕福な個人から、住宅を買うプライベート・エクイティ(PE)ファンド、不動産プロジェクトに投資するため現地で共同事業を立ち上げる企業やファンドなど多岐にわたる。

「高い利回りや、安い入口価格、高いキャピタルゲインを求めて新興市場に投資している」と、SPVグローバルのディレクター、クララ・イェン氏は指摘する。

「休暇先として投資する人もいる。また、例えば2020年のドバイ万国博覧会(万博)やミャンマーの政変といったように、経済や政治的状況のポジティブな見通しも、新興市場に投資する要因だ」と同氏は話す。

ドバイでの不動産投資額は、中国が昨年7番目に大きかった。1月に香港でドバイの不動産展示会を開いたスマンサ・エキシビションズのディレクター、サジド・アリ氏によると、2013年全体で3億5400万ドルだったのに対し、15年は最初の9カ月間で4億6300万ドルを投資している。

中国の機関投資家が昨年ニューヨークとシドニーで行った不動産投資額も、それぞれ1年前の12億ドル、35億ドルから約60億ドル、40億ドル近くまで増加している。

「香港の(中環)エリアでワンルームマンションの平均価格は700万香港ドル(約1億0250万円)だが、ドバイなら同じ価格でワンルームが7戸買える」と、アリ氏は説明。投資リターンが香港では2.8%なのに対し、ドバイでは7.2%だと付け加えた。

チェンと名乗る購入希望者は、ドバイかバンコクの物件を検討しているという。「深センで買うのは不可能だ。価格が高過ぎる」とチェンさんは語る。中国南部の都市、深センの1月の住宅価格は、前年同月比で52%も上昇した。

ドバイの政府系持ち株会社ドバイ・ワールドの不動産開発子会社、ナキールによると、同社が開発したドラゴンシティー内のショッピングモールに近い住宅約600戸の買い主は7割が中国人だという。

「多くの中国人がわれわれから土地を購入した。彼らは開発して貸したいと考えている。なぜなら利回りが約10%に上るからだ」と、ナキールのアリ・ラシェド・ルータフ会長は語った。

<学生向け住宅>

学生向け住宅はPEにとってはすでに人気の投資先だが、中国人投資家も一段と引きつけている。なかには、現地も訪れずにそのような不動産を購入する人もいるという。

「ロンドンにある300万ポンド(約4億8400万円)のマンションを買うなら見ておきたい、というのとは話が違う。彼らは主に投資のために買う。価格が妥当なら、何でも買うだろう」と、不動産投資会社ピナクル・アライアンスのディレクター、ジュリー・ハーベイ氏は語る。

学生向け住宅は大学のキャンパスに近く、通常は中心部にはない。ハーベイ氏によると、英マンチェスター学生住宅の場合、昨年の賃貸利回りは約8%、キャピタルゲインは10%だったという。

(Clare Jim記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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