アングル:米クラウド関連株、適正水準見直しの動き

2016年2月10日(水)12時23分

[サンフランシスコ 9日 ロイター] - 世界経済の先行きに不透明感が強まり、企業の情報技術(IT)支出の低調さが懸念されるようになってきた。こうした中で、投資家は企業向けクラウドサービス関連企業の株価が果たして適正な水準かどうかについて、あらためて検討を迫られつつある。

クラウド関連株は先週、タブロー・ソフトウエアがさえない売上高見通しを発表したことをきっかけに値下がりがきつくなった。売りの動きは、顧客管理大手セールスフォース・ドット・コムやクラウドベース人事・会計ソフトのワークデイ、データ分析ソフトのスプランクといった株価収益率(PER)がかなり高い銘柄にも波及した。

ウェドブッシュ・セキュリティーズの株式トレーディング担当マネジングディレクター、マイケル・ジェームズ氏は「とりあえず売った後で、その理由を考えるというのが目下のハイテク株投資家の心境だ」と指摘した。

ベッセマー・ベンチャー・パートナーズが算出しているクラウド関連44銘柄で構成する指数は、過去5年間で84%上昇しており、同期間のS&P総合500種の上昇率49%を上回っている。

昨年これらの株価が横ばい圏となり、極めて高水準にあったPERもじりじりと低下してきたが、それでも一部企業のPERはなお高く、「宇宙」からようやく「成層圏」まで落ちてきたにすぎない。

セールスフォースのPERの調整後利益見通しに基づく足元のPERは55倍で、ワークデイは1000倍を超える。

企業のバリュエーションを評価する手段としては、PER以外に企業価値/フリーキャッシュフロー(EV/FCF)倍率がある。ある企業の時価総額に債務を足してキャッシュを差し引いた指標であるEVと、設備投資費用を除く営業キャッシュフロー示すFCFを比較するものだ。この倍率が高いほど、投資家は想定される成長に支払う対価が過大であることになる。

例えば成長が鈍化しているシスコシステムズのEV/FCF倍率は7.3倍で、これが比較的一般的な水準だ。ところが最近売られた後でもビジネス特化型ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のリンクトインは62.34倍、ワークデイは123倍近くに上る。足元の株安の前ならリンクトインは386倍、ワークデイは150倍だった。

ロング/ショート型ミューチュアルファンドの投資助言会社バロー・ストリート・アドバイザーズのデービッド・ベッチェル社長は、リンクトインやワークデイ、スプランクなどいくつかの企業向けクラウドサービス株をショートにしている。

ベッチェル氏はワークデイについて「これほどの倍率が妥当化されるには、多大な成長と高い利益率の維持が必要になる」と語り、非常に大きな利益を伴う成長が続くことが前提になっているとの見方を示した。

クラウド関連株に対する最近の売りの大半は、いつまでも続けられないような2桁の増収にすっかり慣れていた投資家からもたらされた、とDFJベンチャーのパートナー、ジョシュ・スタイン氏は話す。

スタイン氏によると、クラウド関連株は「すべての事態が順調であることが織り込まれていた」という。

これらの銘柄が高値を維持できた背景には、ヘッジファンドやいわゆるモメンタム投資家が買っていた面もある。クレディ・スイスのデータによると、ヘッジファンド勢はインターネットソフトウエア・サービス企業セクターへの投資を著しくオーバーウエートにしていた。

もっともクラウド関連銘柄に投資してきたベンチャーキャピタリストの一部は、売りが行き過ぎてしまう可能性があると警告する。

ベンチャー企業のイグニッション・パートナーズでクラウド企業に投資しているNick Sturiale氏は「株式市場ではすべての銘柄を再評価する動きが続いており、負け組と一緒に勝ち組までが手放されつつある。リンクトインやタブロー、スプランク、ファイア・アイは優れた企業だ」と主張した。

(Sarah McBride、Noel Randewich記者)

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