焦点:英EU離脱、一部英国債に朗報か 長期債には懸念も

2016年2月9日(火)14時02分

[ロンドン 8日 ロイター] - 投資家は英国が欧州連合(EU)を離脱する可能性に脅えているが、離脱は英国債に限ってはひとまず朗報となるかもしれない。外国人投資家による英国債買いは過去最大に達し、一部の年限では先週、価格が3年ぶりの高値を付けた。

EU残留か離脱かを問う国民投票は6月に実施される可能性が高く、世論調査では離脱支持派が増えている。

英国債の発行残高は現在、2兆1000億ドル。国民投票で離脱の結果が出れば、期間5年以下の英国債保有者は明らかに勝ち組になりそうだ。一方、期間10年超の年限は信用格付けの切り下げや長期的な景気悪化などの悪影響を受けやすい。

英国の景気が悪化すると英企業株やポンドは売られるが、インフレ率が下がってイングランド銀行(英中央銀行)が金利を低く抑えるとの期待から、英国債は通常買われる。

大半のエコノミストは、英国がEUを離脱すれば短期的には英成長率に悪影響を及ぼすと見ている。シティは3年間で成長率を4%押し下げる影響を予想する。

コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツのデーブ・チャペル氏は「国民投票を実施すること自体、その結果いかんに関わらず景気の足を引っ張る。企業が投資決定を遅らせるからだ」と述べた。

期間5年物の英国債利回りは3日、過去3年ほどの最低を付けた。JPモルガンのストラテジスト、フランシス・ダイアモンド氏は、国民投票で離脱の結果が出れば0.15─0・20%ポイント下がると予想する。

<スタグフレーションも>

しかし、より期間の長い英国債の雲行きはあまり良くない。EU離脱の条件をめぐる不透明感や、成長とインフレへの長期的な影響が懸念されるからだ。

外国人投資家は英国債の4分の1超を保有しており、英国の経常収支赤字は国内総生産(GDP)の3.7%と大きい。このためカーニーBOE総裁は、英国は「外国人の親切に頼っている」だと述べた。

最悪のシナリオでは、ポンドが急落し、外国人投資家が逃げ出す恐れもある。

チャペル氏は「離脱キャンペーンが勝てば、逃避資産としてのポンドと英国債の地位に疑問符がつく」とし、ポンド安が進めば「スタグフレーションへの恐れが生じてイールドカーブはスティープ化しそうだ」と述べた。

大半のストラテジストは、離脱の場合に期間の長い英国債がアンダーパフォームするとの見方で一致しているが、急落はメーンシナリオではない。

外国人投資家は2014年のスコットランド独立をめぐる住民投票前にも英国債を保有し続けたし、昨年10─12月期には過去最大の296億ポンド相当を買った。

13年には英国の信用格付けが引き下げられたが、需要への悪影響はほとんどなかった。そして最大級の投資家である国内の年金基金は、長期債の利回りが上昇すれば買いに入りそうだ。

しかしポンドが想定を超えて20%も下落するなら、景色は変わってくる。ゴールドマン・サックスとシティが最近示した予想は5─10%の下落にとどまっている。

シティの債券ストラテジスト、ジェイミー・サール氏は「離脱票が上回ってポンドが急落し、インフレ率が数年前のように4%に向けて上昇し始める域に達すれば、金融政策委員会は利上げを余儀なくされるかもしれない」と話す。

サール氏は最悪のシナリオとして、10年物英国債利回りが米国債を1%ポイントも上回る事態を予想している。

JPモルガンのダイアモンド氏はもう少し現実味の高いシナリオとして、10年債利回りはまず、より短期の国債と足並みをそろえて0.10%ポイントほど下がりそうだと話した。

(David Milliken記者)

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