訂正:主要国のイールドカーブがフラット化、景気後退の前兆か

2016年2月6日(土)20時57分

[ロンドン 4日 ロイター] - 各国の債券イールドカーブ(利回り曲線)の形状がフラット化している。これは通常、景気後退の訪れを告げるサインだが、今回は中央銀行が量的緩和(QE)やゼロ金利、マイナス金利政策を実施中という異例の状況にあるため、過去の事例が当てはまらないとの見方もある。

債券利回りは長期が短期よりも高く、イールドカーブは右肩上がりの形状を描くのが普通だ。しかし現在、政策金利が急速に動くことはないとの見方から短期債の利回りは低水準に張り付き、長期金利の方も成長率と予想インフレ率の低下を反映して下がっている。

G+エコノミクス(ロンドン)のマネジングディレクター、レナ・コミレバ氏は「過去に比べて状況は少し複雑化している。現在のイールドカーブ形状はマイナス金利や量的緩和など、世界の中銀の政策によって動いている面が大きい。純粋な成長や物価のシグナルとしてのカーブの在り方に変化が生じている」と話す。

ただコミレバ氏は「中銀が世界の経済成長の浮揚や景気後退の再来阻止に成功するかどうかについて、投資家の信認度合いがカーブに凝縮されているのは確かだ。そしてその信認シグナルはといえば、あまり芳しくない」と説明した。

米国の2年国債と10年国債の利回り格差は今週、過去8年間で最も小さい110ベーシスポイント(bp)まで縮小した。

10年債利回りは1.90%を割り込み、米連邦準備理事会(FRB)が12月に利上げを実施して以来、40bp以上も下がっている。

過去においてイールドカーブのフラット化は、かなり正確な成長減速の指標だった。長期債利回りが短期債を下回る「逆イールド」は、景気後退(リセッション)の到来を告げる指標としてフラット化にもまして正確だった。

米国は1980年以来で5回景気後退を経験したが、5回ともその前に逆イールドを経験している。英国でも80年以来の3回の景気後退は、いずれもそれに先立って逆イールド現象が起こっていた。

一方で、英国では90年代末から2000年代初頭にかけて数年間、大幅な逆イールドになったにもかかわらず、景気後退に陥らなかった。また、日本は90年代半ばから4回の景気後退に苦しんだが、この間、逆イールドは起きていない。

世界的景気後退の緩やかな定義は、人口増加率と整合的とされる2.5%程度の成長率を下回った状態。先進国の景気後退の定義は2四半期連続のマイナス成長だ。

シティ、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ、モルガン・スタンレーなど複数の銀行はここ数週間で、米国あるいは世界が景気後退に陥る確率を引き上げた。

<今回は違うか>

国債利回りが急低下するにつれ、国債と社債の利回りスプレッドはワイド化し、一部では警戒すべき兆候との見方が浮上している。バブソン・キャピタル・マネジメントの欧州高利回り債最高投資責任者ザック・サマースケール氏は、現在のところ景気後退のシグナルではないが注視する必要がある(訂正)と言う。

しかし現在の債券利回りは未曽有の金融緩和に大きく影響されているため、イールドカーブが発するシグナルはかつてないほど読みにくいとの指摘もある。

モルガン・スタンレーの欧州金利ストラテジー統括、アントン・ヒース氏は、QEが実施されていなければイールドカーブはもっとスティープな形状になっているはずだと言う。

「今回の厄介さは、景気サイクルが異常な上、もっと重要なことに中央銀行の政策サイクルも異常であることだ。ただ、『今回の状況は過去とは違う』という言い草には常に警戒が必要だ」とヒース氏は述べた。

(Jamie McGeever記者)

*4日付の配信記事で、英文の訂正により12段落目のサマースケール氏のコメントについて、「景気後退のシグナル」を「現在のところ景気後退のシグナルではないが注視する必要がある」に訂正しました。

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