インタビュー:日銀追加緩和、ビジネス界に待望論ない=日商会頭

2016年1月20日(水)18時42分

[東京 20日 ロイター] - 日本商工会議所の三村明夫会頭(新日鉄住金相談役・名誉会長)は20日、ロイターとのインタビューの中で、年初来の株安は3月まで見れば戻って来るとの見通しを示した。

ただ、足元で急落している商品市況は受け入れていくしかないとの見解を表明。合わせて原油など資源価格下落は日本企業の競争力を強化させると語った。日銀の追加緩和を産業界は求めていないとし、実施する場合は理由の説明が必要だと述べた。

昨年夏や今年に入ってからの株価急落は、新たなリスクの予兆というよりも、中国経済の減速を市場が追認したためと分析。「新興国経済の減速と商品市況の下落によりブラジル経済がマイナス成長に転じたが、これは異常ではなく、ある意味新しいノーマル(標準)。世界経済が、中国の高度成長に支えられた2000年代後半のように再び5%以上の高度成長を実現することはない」との見通しを示した。

中東の地政学リスクについては「イランとサウジの対立など、パンドラの箱が開いた格好で、解決策はない」と言い切った。商品市況についても「安定が望ましいが、現実には乱高下する」と指摘。暴落後の現状が「異常なのか、これが正常なのか分からない」とし、「経営者は所与の現実を受け入れていくしかない」と強調した。

もっとも、市場の急変が続いていても「日本経済のファンダメンタルズに何ら影響はない」と強調。「株価下落で気分は良くないが、3月ぐらいまで冷静に見る必要がある。ある程度(まで下がれば)戻ってくると、今のところ確信している」とした。

原油や鉄鉱石など資源価格の下落については「オイルマネーがなくなり株が下がるなどの影響はあるが、(資源輸入国の)日本にとってはチャンス。(製造業の)国際競争力が高まる」との展望を示した。

原油価格急落による物価の低迷や株安を受け、日銀に対する追加緩和観測が市場で広がっているが、待望論は「金融界にはあるかもしれないが、ビジネス界にはない」と断言した。「金融機関はむしろ借り手がいなくて困っている」状態で、さらなる緩和は不要との見解を示した。「さらなる緩和は日銀が判断することだが、(追加緩和に踏み切る場合は)何のためにやるのか、はっきりして欲しい」と述べた。

これまでの「量的・質的緩和(QQE)」に対しては、「批判もあったが円ドルレートも正常化し、国民も希望が持てるようになった」と評価。原油下落で物価上昇率はゼロ近辺にとどまっているが、資源輸入国の日本にとって「原油による物価のマイナスは良いマイナスだ」と静観する姿勢を示した。

QQEを核とするアベノミクスで需給ギャップは大幅に縮小したため、「日本経済の課題は0.2%とも0.5%とも試算される潜在成長率の底上げ」とし、供給サイドの改革の重要性を強調した。

2015年の日本経済を振り返り、「「株価だけが上がり、動きの少ない一年との見方もあるが、環太平洋連携協定(TPP)や法人税(減税)、温暖化対策のCOP21パリ協定採択など、多くの構造的な課題が解決に向かった」と評価した。

(竹本能文、木原麗花 編集:田巻一彦)

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