アングル:主要企業トップ、今年はデフレ脱却へ「正念場」

2016年1月5日(火)19時35分

[東京 5日 ロイター] - 株式・為替市場ともに波乱の幕開けとなった2016年。経済3団体の新春パーティーに集まった主要企業のトップからは、緩やかな景気回復を期待する声が多く聞かれた。

中東情勢や中国の景気動向など、不安材料も多いなか、企業業績の回復、所得増加や底堅い米国景気などが日本の景気を下支え、個人消費や設備投資拡大につながるか、注目の1年となる。日本経済が長く苦しんできたデフレからの脱却へ「正念場」を迎える。

<デフレ脱却なるか> 

日本経済団体連合会の榊原定征会長は日本経済にとって2016年が「極めて重要な年。とくにデフレ脱却、経済再生に向けての正念場の年になる」と位置付けた。

りそなホールディングス の東和浩社長も、今年のキーワードを「正念場」とし「デフレマインドが払拭できるかどうかが掛かっている。労働市場にはタイト感が出てきており、賃金も上がっていくだろう。賃上げが最終製品・サービスに価格転嫁できて、好循環が始まる」と期待する。

日産自動車 の志賀俊之副会長は、中国の景気減速や中東問題に対する不安から投資を躊躇することが「一番のリスク」と指摘。昨年秋頃から出てきた投資マインドが萎めば、バブル崩壊後の縮んだ日本に戻ってしまうと懸念しており「ここはもう一回、自信をもって攻めるべきだと思っている」と話す。

トヨタ自動車 の豊田章男社長も「アベノミクス以降、好循環し始めていることは間違いないと思う。それを今後、いかに持続的な成長につなげていけるか、今年は正念場だと思う」としている。

<実体経済は底堅い>

この日、新春パーティーに集まった企業経営者からは、2016年の景気動向を心配する声はほとんど聞かれなかった。

りそなHDの東社長は「経済全体としては楽観的に見ている。企業業績も上がってきており、日本経済全体としては悪くないはずだ」と話す。日立製作所 の中西宏明会長兼CEOも「実体経済は底堅く、決して悲観的にはなっていない」という。

サントリーホールディングス[SUNTH.UL]の新浪剛史社長は「地政学が不安なため、年の最初は曇り。しかし、(7月の)参院選後により強固な政権になれば、景気は上がってくる。安定政権のあるところが、経済成長できる」とした。

2016年は、4年に1度の米大統領選挙の年でもある。新浪社長は「大統領選挙もあり、米景気は強い」と予想しており、日本経済にとっての支援材料のひとつと期待している。

<賃上げは継続、浸透がカギ>

各社首脳が景気について回復基調とみるのは、賃上げの継続期待もひとつの要因となっている。

日産の志賀副会長は、昨年と異なり個別企業の状況に応じた春闘になるとしたうえで「全体的には業績が良い。業績が良いところは、昨年と同じように賃上げが行われるだろう」とみる。志賀副会長は、賃上げがどの程度の範囲まで浸透するかがポイントになると指摘する。

サントリーHDの新浪社長は「年収で平均3%上げたい」としたほか、ローソン の玉塚元一社長も「ベアは業績次第だが、子育て世代への施策は拡充する」としている。

経団連の榊原会長は「収益が拡大した企業には、昨年を上回る年収ベースの賃金引上げについて、前向きに、踏み込んだ検討を求めたい」とした。

<リスクは中東・中国>

大発会に580円の大幅安となった株式市場。野村ホールディングス の永井浩二グループCEOは「昨日の下げはそれほど気にはならない。きのうの引け値はPER(株価収益率)で12.9倍。やや売られ過ぎ」と分析する。

経団連の榊原会長も「中国経済の減速懸念と中東情勢を受けた動き。今の株の動きは一時的」と指摘。「企業業績は非常に好調なので、それを反映した形にだんだん収束していく。(日経平均が)2万円台を回復できるだけのファンダメンタルズの力はある」との見解を示した。

ただ、企業経営者に中国・中東の2つのリスクを強烈に再認識させる出来事でもあったことは事実。みずほ銀行の林信秀頭取は「地政学リスクには引き続き注意を払いたい。今年、為替が115円から120円のレンジを飛び出すとすれば、テロなどの地政学リスクかもしれない」とみる。

三井物産 の安永竜夫社長は、原油価格の先行きに関して、中国の産業構造の調整がしっかりと行われるかを注視する姿勢を示した。「中国を含めた新興国の(経済活動の)需給調整が終わるにつれて、緩やかに回復することを基本シナリオと考えている」とし、中東で問題が生じて瞬間的に価格が跳ねることはあっても「基本的には2、3年かけて緩やかに回復するというのがベースシナリオ」としている。

(企業・金融グループ 編集:石田仁志)

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