アングル:円債市場の予想物価上昇率が反発、2カ月ぶり水準回復

2015年12月1日(火)16時42分

[東京 1日 ロイター] - 円債市場参加者の物価観(予想物価上昇率)を示すBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)が反発している。今年6月以降一貫して低下基調にあったが、11月10日を底に反転。0.83%と約2カ月ぶりの水準に戻した。もっともBEIと連動することが多い原油価格に本格反発の兆しはなく、今後上昇基調に復帰するかは不透明だ。  

10年物の固定利付国債と物価連動債の利回り格差が示すBEIは、円債市場参加者の予想物価上昇率(期待インフレ率)を示す指標として、日銀も注目している。今年は4月から6月にかけて1・1%前後で推移していたが、その後は一貫して低下していた。  反転・上昇した理由について、市場では1)海外要因、2)短期的な自律反発、3)日銀による発信の影響──との見方が出ている。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券・シニアマーケットエコノミストの六車治美氏は「米国など他の先進国のBEIは、夏の中国ショックなどで低下した後、11月から下げ止まり、上昇に転じた。(各国の物価連動国債を売買する)グローバルな投資家の裁定が働いたのではないか」と見る。    日銀は先進国のBEIが下げ止まるなかで、日本では低下が続くのを注視し、11月の金融政策決定会合では声明文に「予想物価上昇率は、このところ弱めの指標もみられているが」との文言を追加していた。  もっともBEIと連動することが多い原油価格(ドバイ産)は、今春から夏にかけ1バレル50─60ドルで推移していたが、足元では40ドル近傍と下落トレンド。

SMBC日興証券・金利ストラテジストの稲葉裕一氏は「11月10日の物価連動国債の入札前の調整を経て、反発した側面が大きい」とし、「外部環境から今後上昇する材料は少ない」と見ている。

一部では「物価は上がっている」との日銀の発信が、影響しているとの見方も浮上している。日銀が政策運営の本来の目安としていた消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は前年比でゼロ近傍にとどまっているが、7月以降はコアCPIからエネルギーを除いた日銀版コアコアCPIを公表。前週末からは総務省の公表するCPIを加工する形で、日銀版コアコアCPIを含む複数の指標を開示し始めた。

市場関係者の間では「基調的には物価は上がっている」との認識が広がり始めたともいわれる。みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は「今週公表された債券市場関係者のアンケートによる中長期の予想物価上昇率が若干上方修正されており、日銀の影響も若干あるかもしれない」と述べていた。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

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