焦点:経済対策の判断前倒しへ、政府で強まる世界経済減速への危機感

2015年10月5日(月)11時10分

[東京 5日 ロイター] - 政府が経済対策の必要性を判断する時期について、10月中に前倒しする方向となった。背景には、世界経済の減速が急速に強まり、国内経済を圧迫するという危機感があるとみられる。

従来は早くても年末と見られていた補正予算の編成に関しても、早期に本格的な議論が始まる可能性がある。

ロイターの取材に対し政府筋は2日、経済対策取りまとめの判断時期について「11月まで待っていると遅いかもしれない」と語り、経済指標の大枠が出そろう10月中に「準備にかかる可能性がある」との見解を示した。

従来は、11月16日発表の7─9月期国内総生産(GDP)を見てから判断するという「タイムライン」を設定していた政府・与党だが、直近の世界経済減速への懸念が判断変更につながったもようだ。

日本を取り巻く経済情勢に関し、政府筋は、中国経済の減速や資源価格の下落、北欧数カ国で利下げに踏み切ったが金利情勢に変化が認められない状況などを挙げ、「世界的に相当デフレ圧力が強まっている」とも指摘。「国内の基盤は良いが、海外要因で国内(経済)が悪くなっている。海外のデフレは必ず連動してくる」と警戒感を示した。

実際、政府筋の発言後に発表された9月米雇用統計では、非農業部門の雇用者増加数が、市場予想の20万3000人を大幅に下回る14万2000人にとどまった。中国を起点にした世界経済減速の波が、予想以上に早く米国に到達し、米国の雇用情勢にも下向きの圧力がかかり始めた可能性がある。

このような世界経済の減速傾向は政府内でも意識されているもようで、政府筋は経済情勢次第では「緊急経済対策に伴う補正予算は、例年なら来年1月の通常国会となるが、前倒しした方がよいとの判断になる可能性もある」とした。

そのうえで、経済対策について「あまりゆっくりもしていられない。状況は厳しい」と語った。

一方、日銀の追加緩和の是非については「日銀が判断すること」と述べるにとどめ、多くを語っていない。1ドル120円前後で推移する現状の為替相場については「コンファタブル(居心地が良い)」と答えた。

政府部内では、この1─2カ月にわたって、一段の円安につながりやすい追加緩和について、消極的なコメントを発する関係者が多くなっていた。

しかし、ここにきて世界経済の減速が鮮明となっており、ロイターの取材に応じた政府筋は国内経済への波及について、危機感を鮮明にした。政府・日銀の政策対応に対する市場の関心度合いが、一段と高まりそうだ。

(吉川裕子 リンダ・シーグ 田巻一彦)

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