アングル:7月生産減少、日銀は「一時的」と期待 動向注視へ

2015年8月31日(月)19時04分

[東京 31日 ロイター] - 7月鉱工業生産速報は、4─6月期に続き7─9月期も生産がマイナスになる可能性をにじませる結果となった。生産減少は一時的としてきた日銀は、その見解を維持しているが、多くの業種で前月比減産となっているため背景の分析を急いでいる。

生産停滞が長期化すれば、国内景気の回復に水を差しかねず、日銀は今後の動向を注視していくとみられる。

<7月生産、多くの業種で前月比マイナス>

7月鉱工業生産は前月比マイナス0.6%と、民間予測中央値のプラス0.1%を大きく下回り、2カ月ぶりに減少した。自動車、はん用・生産用機械や電子部品・デバイス、鉄鋼など多くの業種で減産となったのが特徴。

特に電子部品と自動車では、スマホ向け液晶や半導体、ダンプトラックやエンジンなどが大幅に減少した。乗用車は底打ち感が出てきたが、軽自動車は引き続き停滞している。

7月の生産指数は97.7で、4─6月期の平均98.3を下回っている。8月と9月の予測値通りになれば、7─9月期は前期比プラス0.6%になる。ただ、このところ実績値が予測値を下回る基調が継続しており、8月には中国・天津港での爆発事件が生産下押しに作用した可能性がある。

民間エコノミストの間では、7─9月期の生産が前四半期比マイナスに落ち込む可能性を指摘する声もある。さらに生産の弱さを受けて、7─9月期の国内総生産(GDP)も2四半期連続のマイナスに落ち込みかねないとの見通しが、早くも出ている。

<日銀シナリオに重要な生産>

日銀は、現時点で7月鉱工業生産について公式な見解を表明していない。だが、多くの業種で減産が確認され、定性的には「弱い」との印象を示す声が多い。

8月金融経済月報は、7─9月期の生産が自動車やはん用機械などにより「再び増加する」と見込んでいたが、7月単月については裏切られた格好だ。

日銀の描くシナリオでは、海外経済の回復を背景に輸出や生産が伸び成長率が上昇、雇用と設備のひっ迫感と、強力な金融緩和によるデフレマインド払しょくとの「合わせ技」で、2016年度前半に2%の物価目標を達成する。生産の緩やかな拡大は、シナリオ実現の前提となっている。

7月消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は前年比横ばいにとどまり、目標とする2%への道のりは、かなり遠く感じられる。

だが、エネルギー下落の影響を取り除くと同0.8─0.9%の上昇になっており、日銀は物価の基調はしっかり上昇しているとの見解を維持している。

ただ、8月以降の生産が予測値を下回って推移すれば、企業活動の停滞の兆しとなる可能性がある。生産の停滞は企業収益の拡大基調に水を差し、長期化すれば賃金上昇の流れに変調をきたすことになる。

雇用・所得環境の好転が、価格転嫁を促進させる力となり物価上昇の流れに弾みがつくと見ていた日銀にとって、生産動向に変調を来すことになれば、大きな情勢変化と認識することになるだろう。

生産の動向が今後どうなるのか、日銀は慎重に分析を進めていくとみられる。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

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