リーマン時上回る日本株乱高下、過剰流動性が振幅を拡大

2015年8月28日(金)18時19分

[東京 28日 ロイター] - 日本株は、まれにみる乱高下を続けている。過去1週間、日経平均の1日平均変動幅は591円と「リーマン・ショック」直後を上回った。過剰流動性を背景とした金融相場の反動といえるが、まさにジェットコースターのような急落・急騰だ。

現在は自律反発局面にあるものの、市場心理が不安定化しており、再急落の可能性があるとの見方も少なくない。

<過去2回の「ショック」上回る変動幅>

今回の日本株の乱高下ぶりは、2008年9月の「リーマン・ショック」と2013年5月の「バーナンキ・ショック」の直後を上回る。

過去1週間、日経平均の前日比は24日895円安、25日733円安、26日570円高、27日197円高、28日561円高。1日平均の変動幅は591円、平均変化率は3.17%となった。

「リーマン」直後の08年9月15─22日が平均321円(平均変化率2.7%)、「バーナンキ」直後の13年5月23─29日が385円(同2.5%)であり、それを大きく上回るボラタイルな相場となっている。

米ダウも過去1週間の1日平均は462ドル。変化率は2.83%と、3.39%のリーマン時より低かったが、変動幅は当時の374ドルを上回った(「バーナンキ」時は62ドル、0.39%)。

<グローバル金融相場の反動>

急落後に大きなリバウンドが到来するのは相場の常だが、今回「リーマン・ショック」さえ上回るほどの相場変動となったのは、グローバル金融相場の反動があると見られている。米利上げが接近したことで過剰マネーの巻き戻しが起きたという。

09年に日米欧合計で5兆ドル程度だった中央銀行のバランスシート規模は、量的緩和策を導入した結果、10兆ドル(約1200兆円)を超える水準まで拡大。金利は一部の国でマイナス圏に突入するなど、過剰流動性と歴史的な低金利が世界的な株高を演出した。

日経平均は6月24日に2万0952円に上昇し、18年ぶり高値を更新。米ダウは今年5月に史上最高値を付けていた。日米ともに企業業績は堅調で、バブル色がそれほど強かったわけではないが、株高の背景に緩和マネーがあったのは確かだ。

JPモルガン・アセット・マネジメントのストラテジスト、重見吉徳氏は「米利上げの接近が相場急変動の要因だ。世界的な株安に見舞われたが、米国は利上げしないという選択肢はないだろう。見送れば市場の失望を買う。上げても金融相場は大きく影響を受けるいばらの道だ」と指摘。しばらく相場の乱高下は続くとみる。

<金利上昇のインパクト>

27日に発表された4─6月期米GDP(国内総生産)改定値。速報値の2.3%から3.7%に上方修正され、9月の米利上げ観測が再び強まったが、米ダウは369ドルの大幅高となった。

米株市場が米利上げを織り込んだとも受け止められるが、市場では「米株が自律反発過程にあるだけ。決して米利上げを織り込んで安定したわけではない」(外資系投信)と慎重な見方が多い。

米経済は堅調だとしても、利上げが金融市場に大きな影響を与えるのは避けられないだろう。「現在、2%の米10年国債金利が3%に上昇すれば、数値的には1%の上昇のようにみえるが、変化率でみれば1.5倍。資金調達では50%のコストアップとなる」と外資系金融アドバイザー社長は語る。

08年11月からFRB(米連邦準備理事会)の量的緩和策は始まった。市場が落ち着いた09年3月から米株は反転。上昇相場は約6年続いた。FRBの資産規模はまだ維持されているほか、日欧の量的緩和は続いている。しかし、米利上げ接近で多くの市場関係者が大きな変化への「備え」を始めたことが、今回の相場急落の背景といえそうだ。

<新興国の不透明感>

さらに今回、市場の不安を増幅させたのが中国だ。予想されていたこととはいえ景気が一段と減速、株価下落に対する当局の対応策も市場の失望を買った。

りそな銀行アセットマネジメント部チーフ・エコノミストの黒瀬浩一氏は、世界同時株安の要因を「中国政府の政策に対する信頼感が低下したことだ」と見る。

政策対応で株価や経済を下支えしたとしても、需要対策など小手先の弥縫策は、将来に大きな禍根を残してしまう。また過度な金融緩和はバブルを生みかねない。過度な財政出動は過剰設備をまた増やすだけだ。

中国の混乱は、経済関係の結びつきが強い新興国に影響する。新興国の経済規模は世界のGDPの半分近くになっており、その影響度はかつてないほど大きい。株価の乱高下が企業や消費者のマインドに影響するかも焦点だ。しかし、これらを見極めるには足元の経済指標ではまだ分からない。それも市場に不安を抱かせる要因となっている。

(伊賀大記 編集:石田仁志)

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