アングル:中国失速でドイツの退潮鮮明、対中輸出の強さ裏目に

2015年8月27日(木)16時46分

[ベルリン 26日 ロイター] - 中国への輸出は長年、ドイツ経済の力強さの源となってきた。ところが最近では、中国経済の急激な鈍化を受けて、対中輸出への依存度の高さが逆にドイツのリスクとなっている。

投資家の間では、対中輸出以外にドイツ国内に有望な成長源があるのか、懐疑的な見方も広がっている。

有力な自動車メーカーやエンジニアリング会社を抱えるドイツの対中輸出は、欧州連合(EU)加盟国の中で首位を独走してきた。

それが今では、ドイツ企業の積極的な中国進出が裏目に出て、これまで利益の源だったのが、逆にコストにつながりつつあるという。

ジャーマン・マーシャル・ファンドのハンス・クンナニ氏は「ドイツの中国との『特別な関係』が弱まっていることは、ますます明白になっている」と指摘。「ドイツ企業の間では、中国へのエクスポージャーを拡大し過ぎたとの認識が広がりつつある」との見方を示した。

ドイツの中国との経済的な結びつきは、他の欧州諸国よりもはるかに強固なものだ。自動車メーカーを中心に、ドイツ企業はライバル諸国に先駆けて中国に進出し、より積極的な事業拡大を続けてきた。その結果、中国は今や、ドイツの輸出企業にとって主な成長の源になった。

ドイツ連邦統計局のデータによると、ドイツの輸出に占める中国の比率は、2007年には3.1%だったが、それが14年には6.6%に上昇して4位につけた。なお、14年のシェア1位は9.0%のフランスで、2位は8.5%の米国、3位は7.4%の英国となっている。

しかし、ドイツの対中輸出は今年、鈍化傾向が鮮明だ。ドイツ商工会議所のデータによると、ドイツの対中輸出は今年上半期は0.8%増と、債務危機に苦しむギリシャへの輸出と同じ伸びにとどまっている。

<エンジニアリング輸出の失速鮮明>

なかでも、ドイツの対中輸出品目で自動車に次ぐ2位のエンジニアリングは、上期の対中輸出が4.9%減と、失速が鮮明になっている。

ティッセンクルップなどのドイツの産業グループにとって、中国市場の重要性は計り知れないほどだ。中国は昨年、ティッセンクルップ・エレベーターの売上高の16%を占めたという。

ドイツの有力ブランドはすでに、中国失速の影響を肌で感じ始めている。自動車メーカーのフォルクスワーゲン(VW)は先月、世界の販売台数予想を下方修正。その際、これまで2桁成長が続いていた中国市場での販売について、停滞を予想していると明言した。

ドイツ政府は、中国経済鈍化のドイツへの影響は「限定的」と強調しており、1.8%としている今年の成長率予想をなお堅持している。

<低投資がドイツ経済のアキレス腱>

輸出はなお、ドイツ経済の成長の主なけん引役だ。第2・四半期のドイツの輸出は前期比2.2%増と、2011年第1・四半期以来の高い伸びを記録。国内総生産(GDP)の前期比0.4%増に寄与した。

ただ、中国を筆頭に世界経済が不透明感を増すなかで、ドイツは輸出偏重を改め、国内への投資に目を向けるべきときなのかもしれない。

メルカトル中国研究センターの経済政策専門家、サンドラ・ヒープ氏は「ドイツは輸出への比重を下げ、投資により重きを置くべきだ」と指摘。「中国が減速するなか、これは急務になっている」と話す。

第2・四半期の独GDPの内訳を見ると、投資の弱さが分かる。総設備投資は前期比で減少し、成長率を0.1%ポイント押し下げた。

有力シンクタンク、ドイツ経済研究所(DIW)のマルセル・フラッシャー所長は「低調な投資がドイツ経済のアキレス腱」と述べた。

*見出しを修正しました。

(Paul Carrel記者 翻訳:吉川彩 編集:吉瀬邦彦)

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