アングル:欧米企業に中国事業見直しの動き、投資削減や生産ライン縮小も

2015年8月4日(火)08時02分

[ロンドン 31日 ロイター] - 中国経済の減速を受け、現地事業に厳しい目を向けている欧米企業の多くが、投資やコストの削減、生産ライン縮小のほか、増加する不良債権の対処を迫られている。

2000年から10年にわたり2ケタ成長を続けた中国経済には多くの欧米企業が重点的に投資してきた。だが、ここ数年、その勢いは急速に鈍り、同国での需要を減退させているほか、中国企業の財務健全性への疑問が生じている。

最近の中国株急落で、中国経済があと数年で過去のような力強い成長を取り戻すとの期待は大きくしぼんだ。

オランダの総合電機大手フィリップスのフランス・ファン・ホーテン最高経営責任者(CEO)は27日、第2・四半期決算発表後の電話会議で「中国事業は2ケタの伸びを記録する素晴らしい業績が5年続いたが、徐々に伸び悩んでいる」と指摘。「今後は中国の成長に関してかなり控えめの見通しが必要になる。現実的になるということだ」と述べた。

中国経済の規模を踏まえると、欧米企業幹部の現地での通常の事業継続が難しいとする発言は、中国からの撤退を示唆しているわけではない。

<シェア拡大より黒字確保>

スイスのエンジニアリング大手ABBのウルリッヒ・シュピースホーファーCEOは「中長期的には中国経済の回復を楽観視している」と語る。ABBは慎重なコスト管理と割高とされる同社製品の価値を顧客に説明することに努めている。

米自動車大手フォード・モーターは中国市場の縮小に減産で対応している。

このような欧米メーカーの対応を受け、欧米を中心とするサプライヤーにも影響が広がっている。仏自動車部品メーカー、ヴァレオは中国の自動車工場からの需要減少により、成長を見込んだ事業計画を見直さざるを得なくなったと明らかにした。

OC&Cストラテジー・コンサルタンツのパートナー、ウィル・ヘイラー氏は、中国の事業環境の悪化を受け、企業の関心は市場シェアの拡大から中国事業の黒字確保、少なくとも赤字を減らすことにシフトしていると指摘する。

企業が取る戦略は、コスト削減や製品の値下げなど多岐にわたる。

米ゼネラルモーターズ(GM)は中国では効率的なコスト管理を目指すと表明。独自動車大手BMWやイタリアのサングラス・眼鏡大手ルクソティカは値下げで中国人消費者の取り込みを図っている。

生産ラインの見直しも選択肢の一つ。仏食品大手ダノンは、中国の粉ミルク事業Dumexを現地企業の雅士利国際に売却し、より高い利益が見込める世界的ブランドの売り込みに注力する方針を示している。

<信用リスク見直しも>

中国の事業環境の悪化は、企業に信用リスクの見直しも迫っている。スウェーデンの大手トラックメーカー、ボルボは昨年、中国事業で貸倒損失が見込まれるため、6億5000万クローナ(7500万ドル)の引当金を計上すると発表。同社のヤン・ギュランダーCEO代行は今年7月半ば、同社が未返済融資についてディーラーと厳しい交渉を行ったと明らかにしたが、状況が落ち着いたかどうかは分からない。

信用リスクの増大を受け、一部の欧米銀行も中国に対するエクスポージャーを見直している。スイスの金融大手UBSは中国国内の顧客に対する融資を中止したと発表した。

欧米企業がこれまでよりも中国事業の運営に慎重になったとはいえ、同国での成長機会を狙う姿勢に変わりはない。実際、最近の株価急落に乗じて現地企業を安価で買収できないか模索する動きもある。ただ、多くの中国企業が融資などで政府の支援を受けるなか、購入対象となる企業は少ないと企業幹部らは指摘する。

*見出しの体裁を整えて再送します。

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