アングル:「ユーロ圏から出ていけ」、ギリシャ見放す独産業界

2015年7月2日(木)14時03分

[フランクフルト 1日 ロイター] - ドイツの産業界から、ギリシャのユーロ圏離脱を求める声が出始めている。ドイツ企業は既にギリシャ事業を大幅に縮小しているため、離脱となっても影響は限定的と考えており、むしろギリシャがユーロ圏にとどまり危機が長引いたほうが経済への悪影響が大きいと見ているようだ。

ドイツ自動車工業会(VDA)の会長で、ドイツ最大の経済団体であるドイツ産業連盟(BDI)の副会長を務めるマティアス・ウィスマン会長は「ギリシャのユーロ圏離脱はもはやタブーではない」と断言。「むしろユーロ圏の安定化に寄与するのではないか」と突き放した。

ギリシャは先月末、国際通貨基金(IMF)への融資返済ができず、事実上のデフォルト(債務不履行)状態になった。その後、新提案などの動きも出ているが、もはやドイツのメルケル首相ですらも、ギリシャをユーロ圏にとどめることはできない、との見方が広がっている。

ギリシャでは5日、債権団が示した財政構造改革案受け入れの是非を問う国民投票が実施されるが、欧州の政策当局者の大半は、事実上はユーロ圏から離脱するかどうかを問うものになる、と考えている。

ドイツ経済の屋台骨とも言える18万社の同族会社から成る「同族企業家─自営企業家業務共同体」は、最近のギリシャ情勢を見て、ギリシャ救済への反対姿勢が一段と強まった、と表明。「ギリシャがユーロ圏から秩序立って離脱できるよう尽力すべきときだ」としている。

同団体のエコノミスト、ダニエル・ミトレンガ氏は「ユーロ圏の先行きは独企業にも影響する」とし「グレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)で他国も崩壊するような『ドミノ理論』は望まない」と述べた。

ドイツ企業のギリシャへの視線が変化した背景には、独企業が近年、ギリシャへのエクスポージャーを大幅に縮小していることがある。

ドイツのギリシャへの輸出額は昨年、わずか50億ユーロ(約56億ドル)と、ドイツの輸出全体の0.5%にも満たなかった。ドイツの輸出先ランキングでは、ギリシャは34位から38位に後退した。

<ドイツ企業、ギリシャ離脱への備え万全>

ドイツ機械工業連盟(VDMA)の会長は「純粋にマーケットの観点から見ると、ギリシャがユーロ圏から離脱してもドイツの機械・設備メーカーは対応できる」と強調。加盟企業の対ギリシャ輸出は昨年は3億6000万ユーロで、08年の6億8000万ユーロから急減した。

より目先には、取引相手のギリシャ企業が支払いを停止するのではないかという懸念があるが、独企業には失うものはあまりないという。

ドイツ貿易・投資振興機関アテネ事務所のミカエラ・バリス氏は「備えは万全だ。ギリシャで事業を行う独企業は2年前から、ギリシャに保有する現金を日々の業務に必要な額に制限している」と述べた。

ドイツテレコムはギリシャ通信最大手OTEに40%出資、独企業ではギリシャへのエクスポージャーが最も大きい。ドイツテレコムは、OTEを独立企業として運営している、としており、株式取得に支出した42億ユーロのうち、26億ユーロが償却済みという。

1900年にギリシャに進出したシーメンスもギリシャ事業を大幅に縮小。シーメンスのギリシャでの売上高は、前年度は1億2000万ユーロで、グループ全体の売上高の0.2%弱に過ぎない。

バイエルは、ギリシャがユーロ圏から離脱しても「影響には対処できる。グループ売上高に占めるギリシャの比率はわずか1%だ。われわれは医薬品など不可欠な製品の供給は続ける」としている。

(Georgina Prodhan記者 翻訳:吉川彩 編集:吉瀬邦彦)

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