アングル:ファンド相互販売解禁、香港は中国本土ETFに戦々恐々

2015年7月1日(水)17時11分

[香港 30日 ロイター] - 中国本土と香港で証券投資ファンドの相互販売が7月1日に解禁され、対象となるファンドにはETF(上場投資信託)も含まれる。香港では本土のETFに市場シェアを奪われるのではないかとの懸念が広がっている。

今回のスキームは本土投資家が香港のファンドを、香港の投資家が本土のファンドをそれぞれ購入できるようになるもの。当初の購入限度額は各3000億元(483億ドル)に設定されている。

香港のETF業界は戦々恐々だ。

欧州系銀行の大中華圏機関投資家向けセールス部門責任者は「本土のファンドは香港よりも幅広い商品を提供できるため、香港のETF市場にとっては大きな変化だ」と話す。

世界的な投信会社大手であるバンガードのアジアETFプロダクトマネジャー、ブライアン・ロバーツ氏は「中国本土の運用会社は、普通に考えれば自らの市場をよく理解しているため、ファンドの競争力が高くなるだろう」と指摘。これまでにないETF商品が中国本土で登場する可能性もあると付け加えた。

クロスボーダーのETF商品は現在、主に適格外国機関投資家(QFII)、適格国内機関投資家(QDII)、人民元適格外国機関投資家(RQFII)、人民元適格国内機関投資家(RQDII)を通じて運営されている。

取引所のデータによると、香港で投資家が購入できるETFは130銘柄あるが、中国A株を対象としているのは42銘柄。一方、業界のデータによると、これが中国本土では約110銘柄に及ぶ。

香港で最も長く運営され、かつ最も人気のある中国関連ETFの1つは、iシェアーズFTSE・A50チャイナ・インデックスETFで、運用資産額は約115億ドルに上る。

一方、本土側の最も近い商品である嘉実滬深300ETFと華泰柏瑞滬深300ETFは、モーニングスターのデータによると、合計の運用資産額が60億ドル超となっている。ただ、増加ペースは大きく、強い需要があることを示唆している。

証券会社KGIアジアのベン・クォン最高経営責任者(CEO)は「中国の運用会社が香港でファンドを販売することができるようになるため、香港のETF市場シェアは食われるだろう」と指摘する。

中国株式市場は現在、振れやすい地合いが続いているが、中国をターゲットとしたETF市場は拡大が見込まれている。データによると、中国を除く世界の機関投資家のポートフォリオに占める中国株の割合は1%に達していない。

(Saikat Chatterjee記者、Michelle Chen記者 翻訳:川上健一 編集:加藤京子)

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