日産ゴーン社長の報酬、初の10億円超 株主から疑問の声も

2015年6月23日(火)18時08分

[横浜市 23日 ロイター] - 日産自動車は23日に開いた株主総会で、カルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)の2015年3月期の役員報酬が10億3500万円だったことを明らかにした。14年3月期の9億9500万円から4000万円増えた。年間1億円を超す役員報酬の開示が義務づけられた10年3月期以降、初の10億円超えとなった。

ゴーン社長は役員報酬の水準について、経営陣が多国籍からなる海外の自動車メーカーなどを参考にしており、「役員に相当の報酬を支払わなければ、優秀な人材を維持できない」などとして株主に理解を求めた。

ただ株主からの質問では、トヨタ自動車の豊田章男社長の14年3月期の役員報酬が2億円台だったことに触れ、トヨタをはじめとする競合他社の業績に照らして、ゴーン社長の「10億円超という水準は正当なのか」などと疑問の声も上がった。

トヨタ株も保有している日産株主は総会終了後、利益水準は異なるとはいえ、15年3月期の年間配当がトヨタは1株当たり165円で、日産の33円は低いとして「そんなに役員報酬に回すお金があるのなら、配当ももっと上げてほしい」と語った。

また、ある株主は「株主の質問に対して、ゴーン社長による回答が多く、社長の一極集中という感じを受けた」と話し、「結局、日産の経営はゴーン社長しかできない。高額報酬もやむを得ない」との声も聞かれた。

ゴーン社長は提携関係にある仏ルノーのCEOも兼務しており、ルノーCEOとしての14年の報酬は約720万ユーロ(約10億円)だった。

<競合CEOはゴーン氏よりも高額>

ゴーン社長の日産CEOとしての役員報酬は米ドル換算で見ると840万ドルで、14年3月期の980万ドルからは14.3%減少した。フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)やフォルクスワーゲン(VW)など世界の主要自動車メーカーCEOの役員報酬額と比べると、その水準は低い。

日産がまとめたデータによれば、主要自動車メーカーCEOの昨年の役員報酬額は、FCAのセルジオ・マルキオーネ氏が8520万ドル、VWのマルティン・ヴィンターコルン氏が2070万ドル、ゼネラル・モーターズのメアリー・バーラ氏が1540万ドルなどとなっている。

東京商工リサーチによると、22日午後5時時点での国内上場企業の15年3月期の役員報酬では、ソフトバンクのロナルド・フィッシャー取締役の17億9100万円が最高額となっており、ゴーン社長の報酬は2番目。役員報酬ではないが、ソフトバンクは昨年9月に米グーグルから招いたニケシュ・アローラ副社長に対し、15年3月期は移籍に伴う一時金などとして報酬総額165億円超を支払っている。

<今年後半にEV航続距離拡大へ前進>

次世代エコカー戦略についてゴーン社長は、今後も電気自動車(EV)に「こだわる」とし、EVにおけるリーダーの座と投資を維持し続けると強調。EV「リーフ」で「今年後半には航続距離拡大に向けた次のステップを紹介できる予定」と明らかにした。

チーフ・コンペティティブ・オフィサーの西川廣人氏も、EV販売のスピードは想定より「多少緩やかだが、順調に進んでいる」との認識を示した。

燃料電池車へのスタンスに関する株主質問には、坂本秀行副社長が「有望な技術であり、研究を続けている」と答えたが、製造コストやインフラ面など燃料の水素にはまだ課題が多いとの見解を示した。

また、国内生産を決めている米国向けスポーツ型多目的車(SUV)「ローグ」について、ゴーン社長は「来春から」米国に出荷することを検討していると明かした。

一方、ルノーの大株主であるフランス政府が議決権を倍増させ、経営への影響力を強めているが、こうした動きが日産に与える影響を懸念する株主も見られた。これについてゴーン社長は、日産が事業の方向性を見失う、提携効果が損なわれるという2つのリスクを挙げながらも、ルノーとの信頼関係があればそのリスクは回避できるとの考えを示した。

*内容を追加します。

(白木真紀)

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