どんどん円高・円安になればよいものでない=黒田日銀総裁

2015年6月19日(金)18時59分

[東京 19日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は19日の金融決定会合後の会見で、10日の国会での為替発言が円安けん制ではないとの立場を強調したものの、「どんどん円高や円安になればよいものでない」とも指摘し、「急激な変動は望ましくない」との見解をあらためて示した。

また、円安が進んでも必要であれば追加緩和を辞さない姿勢を示した。

<為替注視するが、水準・スピード考えて金融政策運営しない>

黒田総裁は10日の衆院財務金融委員会で「実質実効レートではここからさらに円安はありそうにない」と発言。これが政府・与党や市場関係者の一部では急速な円安に対するけん制と受け止められた。

会見で総裁は「国会で足元や先行きの名目為替レートについて述べたわけではない」として円安けん制の意図を否定。「実質実効為替レートで名目為替レートの先行きを占えない」などと釈明した。

また「金融政策は物価の安定を目指したものであり、為替を目標にしていない」との公式見解を強調。「為替は物価に影響するので注視するが特定の水準やスピードを考えて政策運営することでは全くない」とし、為替と関係なく必要であれば追加緩和に踏み切る姿勢を示した。

もっとも「投資家の資産入れ替え(ポートフォリオリバランス)が緩和効果の一つの現れ方」とも述べ、日本国債から外国債券や株式に資金がシフトすることによる円安・株高が、緩和の想定された波及経路である点を示した。

<為替の適切な幅、難しい>

為替の「望ましい水準や変化のスピードについては言えない」「為替の適切な幅はなかなか難しい」とし、安定した推移が望ましいとの見解を強調。為替は「経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映して安定的に推移するのが望ましいとのG7の共通理解はその通りだ」と述べた。

その上で「今の時点で円安になれば日本経済にマイナスということもできない」とも述べた。

<年8回の決定会合、グローバル・スタンダード>

日銀は19日の決定会合で、現在年14回の会合を8回に減らす一方、年2回公表している「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)を年4回公表とするなど、運営方針の改革を決めた。

総裁は「(会合は)年8回が主要国の中銀で主流のグローバルスタンダード」と説明。「決定会合の回数が減っても、情報公開姿勢が後退したとは考えない」とし「年14回の会合をわずらわしいと思ったことはない」とも述べた。

物価については、原油価格が緩やかに上昇すれば2016年度前半に2%に達するとの従来見解を踏襲した。

日銀は昨年10月、原油価格の急落が予想インフレ率に悪影響を与えかねないとして追加緩和に踏み切った。総裁は「消費者物価指数(生鮮食品除くコアCPI、消費税の影響除く)の前年比が足元ゼロでも、予想インフレ率は下がっていない。追加緩和の効果はあった」と指摘した。

<ギリシャ情勢「市場で緊張高まっている」>

中国経済について「総じて安定成長を維持しており、成長モメンタムが鈍化しているが、当局が財政・金融による景気の下支え策を講じている」との見方を示した。

上海株について「急速に上昇しボラティリティが高まっているのは事実」とした。もっとも「中国の金融は銀行中心だ」として、株安に転じた場合の影響が、家計に株式投資が浸透している「先進国とは同様でないかもしれない」と楽観視した。

ギリシャ情勢について「市場で緊張が高まっている」と指摘、「市場への影響を注意深くみていきたい」と強調した。ギリシャで債務不履行(デフォルト)が起きた場合の影響についてはコメントを控えた。

国内景気の先行きについて、前提として「世界経済が緩やかに回復していくのがベースシナリオ」とし、輸出は5月が急落したものの、「先行き、振れを伴いつつ緩やかに増加していく」との見通しを示した。

非製造業の設備投資が堅調である点について「内需主導の経済成長と平そくが合っている」と指摘したが、「製造業の設備投資計画もかなり強く(今後)伸びないと決めつけられない」と述べた。

長期金利の変動が大きくなっている点について、「ECBの量的緩和効果で、非常に低い水準まで下がった金利が反転して上昇した影響が及んでいる」と解説。「日本の振れの幅は極めて小さく低位安定している点に変わりはない」と指摘した。

*内容を追加しました。

(竹本能文、伊藤純夫)

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