トヨタ社長「捜査に全面協力、ハンプ氏信じる」繰り返し強調

2015年6月19日(金)20時41分

[東京 19日 ロイター] - トヨタ自動車の豊田章男社長は19日、同社のジュリー・ハンプ常務役員が麻薬取締役法違反(輸入)容疑で逮捕されたことについて会見を開き、「世間を騒がせ、誠に申し訳ない」と陳謝した。「ハンプ氏は、私にとってもトヨタにとってもかけがえのない大切な仲間」と続け、「当局の捜査には全面的に協力する。ハンプ氏が法を犯す意図はなかったということが明らかになることを信じている」と述べた。

<「法を犯す意図なかったと信じる」繰り返す>

警視庁は18日、麻薬の成分を含む錠剤を米国から密輸したとして、ハンプ氏を麻薬取締法違反の疑いで逮捕。ハンプ容疑者は、警視庁の調べに対して「麻薬を輸入したとは思っていない」と容疑を否認している。

持ち込んだ錠剤に含まれる「オキシコドン」と呼ばれる成分は、日本では麻薬に指定されているが、医師の処方箋があれば鎮痛剤として使われることもあるという。

ハンプ氏の体調や鎮痛剤使用の事実、役員登用時や現在に至るまで、どの程度そういった点を把握していたかなどについて、豊田社長は「捜査中のため、そのあたり(の回答)は差し控える」と述べるにとどめ、同席した早川茂専務役員も「個人の体調や医療プライバシーに関連することは控える」として言及を避けた。

また、法を犯していないことが証明された場合のハンプ氏の役割、真実が明らかになるまでの体制、勾留されている間の代役はどうするのかなどの問いに対しても、豊田社長は「捜査への全面協力が大切。今後の捜査を通じて、法を犯す意図がなかったことが明らかにされると信じている」と繰り返すにとどめ、明言しなかった。

<「サポート準備、多少不足していた」>

豊田社長がハンプ氏の逮捕を知ったのは18日午後1時。「警察から連絡があったと、人事担当役員から連絡があった」と説明し、「直属の部下である役員も従業員も、私にとって子供のような存在。子供を守るのは親の責任で、子供が迷惑をかければ謝るのも親の責任」と語った。

トヨタはこれまで海外拠点に日本人社員を赴任させることはあっても、ハンプ氏のように外国人役員を日本に常駐させることは初めてだった。豊田社長は、ハンプ氏の登用は「真のグローバル企業として大きな第一歩だった」とする一方、ハンプ氏をサポートする態勢や準備が「多少、不足していた」と反省した。

ハンプ氏を登用した理由について、豊田社長は「ひと言でいえば人柄だ。性別や国籍に関係なく適材適所が大切で、現場を任せられる人であることが重要なポイントだった」と説明。ハンプ氏は部下とのコミュニケーションを大切にし、「日本に溶け込もうとする努力を人一倍していた」として人柄を評価したという。

ハンプ氏は今年4月1日付で常務役員に就任。トヨタ初の女性常務役員で、グローバルでの広報・渉外部門を統括していた。豊田社長は、今後も国籍や性別に関係なく、適材適所で多様な人材を積極的に登用していく方針に変更はないことを強調。また、捜査協力によって業務面などに遅れが出ないよう「全員一丸となってやっていく」とした。

*内容を追加します。

(白木真紀 編集:田中志保)

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