日銀、金利抑制と出口戦略で微妙な舵取り必要=同友会代表幹事

2015年5月26日(火)18時44分

[東京 26日 ロイター] - 経済同友会代表幹事に4月27日に就任した小林喜光・三菱ケミカルホールディングス取締役会長は、アベノミクス3年目の課題として、財政再建を成長依存ではなく、国債金利上昇回避のためきちんとした歳出削減により実現すべきだと指摘した。26日、ロイターのインタビューで明らかにした。

また、持続可能な経済に向けた好循環を作るため、規制緩和に取り組む必要性を強調した。同時に日銀は金利の上昇を抑制しつつ、出口戦略に取り組むというセンシティブな政策を求められる状況になるとの見解を示した。

日経平均が2万円を超えた足元の株価上昇については、株価収益率(PER)でみれば決してバブル的状況でないと語った。

<日本企業はようやくフェアな競争のスタートラインに>

小林代表幹事は、日本企業の国際競争力について、従来は高い原油コストと1ドル80円前後まで進行した円高に加え、労働法制による壁や高い法人税率など大変なハンディキャップがあったと指摘。

「今回、これだけの円安と資源価格の下落により、ようやくフェアな戦いがスタートできる」として、資源関連企業やいくつかの電機メーカーを除き、日本企業にとって収益力の回復はいよいよこれから、との見方を示した。

そのうえで「この勢いでいけば、2020年のオリンピックの年までは、日本経済は政府が目指す名目3%台、実質2%台という成長目標に向けて結構いけるのではないかと思う」と明るい見通しを示した。

そうした中で、株価も2万円台まで上昇していることについて「バブルだという人もいるが、リーマン・ショック前のPERと比べれば、決してバブルというような状態ではない」とした。

<安倍政権の今年の課題、歳出削減でのPB黒字化示す事>

マクロ経済は企業を取り巻く環境が好転し、今年1─3月期の成長率も実質2.4%程度、GDPデフレーターが上がり名目成長率も7.7%と回復してきたものの、原油価格下落の恩恵が大きかった面があると指摘。「原油価格が60ドル台に上がってきてほぼ安定した下で、4─6月期の成長が最終的にどうなるか見てみたい」と述べた。

アベノミクス3年目の課題については「民間経済は今の好循環を持続すること、そして政府は公共投資や社会保障費をどれだけ減らせるか。その2つだ」と指摘。

中でも財政再建への取り組みをについては「GDP(国内総生産)の成長率は昨年度はマイナス、ここへきてようやく上がってきたとはいえ、政府の示す2020年までに名目3%台、実質2%台という仮定の実現は、そんなに簡単ではない」との見通しを示した。そのうえで「やはり財政収支の赤字は、歳出削減で実現すべき。社会保障費の削減により埋め合わせないと、成長に依存してしまうとやや計算が合わなくなっていくのではないか」として、赤字分はほぼ全額歳出削減で穴埋めする手法をとるべきとの考えを示した。

<国債金利上昇回避へ、日銀の出口戦略は連立方程式に>

財政再建を歳出削減で達成すべき理由として、国債金利上昇への懸念もにじませた。「それほどの高い成長を実現したとしても、まだ9.4兆円の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字が残るという計算だ。高齢化による医療費がかさむ中で、社会保障費をフラットにするだけでも大変だが、国家としてどれだけ歳出を削減するか、そこがきちっとできないと国債の金利が上昇してしまう。1000兆円の債務がある中で、1%金利が上がるだけで10兆円の債務増加となる。PBが9.4兆円改善したとしても引き合わない」と説明した。

また政府内に債務残高GDP比率を財政再建の目標にすべきという意見もあるが、「それは指標とはなりにくい。まずはプライマリーバランス黒字化を目標とすべきだ。なぜなら、景気が良くなれば金利は上がる」と述べた。

小林氏はまた、財政再建が課題となる中で日銀の異次元緩和も微妙なかじ取りが求められるとの認識を示した。

「日銀が金利を抑えつつ、どうやって金融政策のかじを取るかはセンシティブな話だ」として、3年も5年も80兆円ずつの資金供給を続けるわけにはいかない中で、国債金利の上昇を避けつつ出口戦略を実行するのことは、連立方程式を解くような難しいことだとの見方を示した。

*内容とカテゴリーを追加しました。

(中川泉 スタンレー・ホワイト)

(中川泉 編集:田巻一彦)

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