焦点:負け続けの米アクティブ運用型ファンド、ETF投資積極化

2015年5月25日(月)12時37分

[ニューヨーク 22日 ロイター] - パッシブ運用型ファンドに対して連戦連敗の米アクティブ運用型株式ファンドが、勝てないなら敵を飲み込んでしまえとばかり、相次いで上場投資信託(ETF)を運用資産に組み込んでいる。

過去5年間というもの、アクティブ運用型ファンドはETFに対してリターン、市場シェアの両面で敗北を喫してきた。リッパーのデータによるとこの間、ポートフォリオの組み入れ比率トップ10の中にETFが入っているアクティブ運用型株式ファンドの数は174%も増え、148件になった。過去1年間では23%増えた。

ファンドマネジャーらによると、手数料の低いETFを組み入れるのは、「キャッシュドラッグ」を和らげる狙いがある。キャッシュドラッグとは、解約請求に備えて通常、運用資産全体の3─5%相当保有しているキャッシュによる運用成績の押し下げ作用のことを指す。

例えば2006年にジャーナル・オフ・ファイナンシャル・マネジメントが公表した調査によると、キャッシュ保有は平均的株式ファンドの運用成績を年間0.70%幅低下させている。

解約準備用の資金をキャッシュの代わりにETFで運用することは「株式市場へのエクスポージャーを増やす安価かつ効率的な方法であり、キャッシュドラッグの回避にも役立つ」と言うのは、イートン・バンス・ヘクサベスト米株式ファンドを運用するクリス・サンダーランド氏だ。リッパーのデータによると、このファンドは3月末現在、SPDR・S&P500ETFが組み入れ比率第2位の資産となっている。

ETFはキャッシュほど流動性が高くないが、個別株よりは高いことが多い。

もっとも、ベンチマークに沿って動くETFを組み入れ比率上位に入れているファンドが、長い目で見てベンチマークを上回る運用成績を上げるのは至難の業だろう。投資家としては、手数料の安いパッシブ運用ファンドではなくわざわざアクティブ運用ファンドを買う理由が見当たらない。

また、株式市場全体が上昇局面の時にはキャッシュでなくETFで運用した方が良いが、市場が突如暗点した場合にはキャッシュと違って損失を被る。

もちろん、一部のアクティブ運用型ファンドは数週間単位といった短期間でしかETFを保有していない。こうしたファンドの幹部らは、ETF保有は戦略の中核を成してはいないと話す。

例えばイートン・バンスはETFの組み入れ比率を5%未満に維持している。

アクティブ運用を手掛けるファンドマネジャーらはベンチマークを上回る成績を上げられず、高い手数料を正当化するのにますます苦慮している。

昨年ベンチマークを上回ったミューチュアルファンドは2割にとどまり、過去10年超で最悪となった。アクティブ運用型ファンドがパッシブ運用型を大差で打ち負かすことができない状態は7年目に入った。

リッパーのデータによると、この間インデックス・ファンドとETFには4500億ドル超の資金が流入したのに対し、アクティブ運用型からは4300億ドルが流出した。

ETF投資を始めたファンドの種類は海外小型株ファンドから金関連ファンド、中型成長株ファンドと、多岐にわたる。

T・ロウ・プライス・インターナショナル・フロンティア市場株式ファンドとT・ロウ・プライス・インターナショナル・コンセントレーテド株式ファンドはいずれも昨年末時点で、組み入れ比率トップ10にETFが入っていた。

ETFに目を向けているファンドのすべてがキャッシュドラッグ対策のみを目的にしているわけではない。パッシブ運用であるETFの定数料は資産のわずか0.06%と、平均的なアクティブ運用型投信の1.2%を大幅に下回る。ETFは、直接購入できない海外の値がさ株に低コストでアクセスできる手段にもなっている。

(David Randall、Jessica Toonkel記者)

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