東電の再建計画、「柱は賠償」と社長 期限設定を示唆

2015年5月22日(金)19時50分

[東京 22日 ロイター] - 東京電力の広瀬直己社長は22日の記者会見で、改訂作業中の再建計画「総合特別事業計画(総特)」について、「改訂の大きな柱は賠償だと思っている」と述べた。

自民党の「復興加速化本部」が前日にまとめた提言で、福島第1原発事故に伴う営業損害と風評被害に対する賠償は2017年3月までとするなどの期限を提示。広瀬社長は「ずっと賠償ですべての復興を成し遂げていくのは難しいと思っている」と述べ、自民党提言に沿う形で東電としての方針を示す意向を示唆した。

自民党同本部の提言は避難指示解除を進めるべきと明記。放射線量の高い「帰還困難区域」(約2万4000人)を除く、「住居制限区域」(約2万3000人)と「避難指示解除準備区域」(約3万2000人)の2つの避難区域について、2017年3月までに避難指示を解除するよう政府に対応を求めている。両区域の避難者には精神的損害賠償として1人当たり一律10万円を支払っているが、今回の提言では避難指示解除から1年後となる18年3月までに一律で賠償するとした。

営業損害と風評被害に対する賠償については17年3月までとする一方で「その後は個別の事情を踏まえ適切に対応する」とした。東電と資源エネルギー庁が昨年末、営業損害と風評被害に対する商工業者向けの賠償は2016年2月までとする案を提案したが、地元側が猛反発し、同案を撤回した経緯がある。

今月13日には、福島県の鈴木正晃副知事のほか農業、商工業関係者が広瀬社長らと面談。「被害がある以上は、賠償は続く。誠意をもった賠償を」(鈴木副知事)と注文するとともに、今後、賠償方針を早急に示すよう求めていた。

この日の会見で広瀬社長は「被災者の意見をいろいろ聞いていく」と述べつつ、「自民党の提言はありがたい。ずっと賠償ですべて復興を成し遂げていくのは正直難しいと思う。いろいろな策をまとめて復興が進んでいく」など述べた。改訂版の総特では「要賠償額はその時点での総額の見積りはできる」(広瀬社長)としている。

大幅に遅れている柏崎刈羽原発の再稼働について同社長は「今の段階でいつと申し上げるのは難しい」としながらも、金融機関に対する説明では「(再稼働時期を)何月かには置いて、それに基づいて(収支を)計算する作業は必要」と述べた。関係者によると、東電は今月、柏崎刈羽6、7号が今年10月から順次再稼働した場合、2015年度には単体で1780億円の経常利益を見込むとの収支想定を取引金融機関に示している。

*内容を追加します。

(浜田健太郎)

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